-賃貸屋の長期休暇、海へ行こう④-

夜明け…海に広がる水平線から太陽に似た星が昇る…港町イルセア朝がやってくる先日の騒ぎは嘘のように港には朝市漁に出航する船と入港してくる船が行き来する。

市場や各お店、テントが張られテーブルや商品の配置、陳列がされはじめている…先日まで…高級ホテル、イスルス・キングスホテルの隣にあった山は以前までの姿とは様変わりしていた…


フィンが妖精たちにたのみ森林が禿げあがった部分は修繕されいまは前と変わらず森林が生い茂る緑豊かな姿がもどっている…双子の山岳に代わっている以外は…そんな山の中…2カ所で地面が盛り上がる


「ぺっ!ぺっ!!…イズミも無茶しやがる…俺らじゃなければ死んでるぞ!! 」


「はぁーはぁー…川の向こうであっちの世界で死んだ爺ちゃんが手招きしてたぜ… 」


「っておいヴォルフ! 腕! 腕!! 」


「いてぇ~と思ってたら…もげてたか… 」


「手を固定してもってろ!! 完全修復リカバリー…なんとか付いたな…これも飲んどけ」


アキトはヴォルフに下位エリクサーを渡す…それを受け取りヴォルフは一気に飲み干すと息をつく…


「オリジン持ちはやべ~な…あれで本気じゃないんだろ? やっぱりお前は無傷だな…イズミちゃんもお前がいるからあんだけの魔法ぶっ放してきたんだな…お前もオリジンに至ってるのか?」


「ん?ま~な~…」


「たく…オリジン持ち…本当のチートめ! 巻き込まれる人間の目にもなってみろ! まー見てろいずれ俺も至ってやるからよ…」


「ハゲは王都最強だもんな! 」


「ハゲじゃねーよ!…ったく誰が言い始めたんだか…上位にはいるとは思うが周りに本当の最強が複数いると悲しくなるわ…」


アキトはヴォルフに肩を貸し、ホテルの方に歩き出す…


「なぁ…アキト…ホテルに戻っても逆に俺ら命の危険ないか? 」


「「……」」


「いや、逆の逆だ謝らずに逃げて見ろ? 王都に俺たちが帰れる場所がなくなる 」


「たしかに…」


彼ら二人は自業自得とは言え気が遠くなる思いをしながら山を下りて行った…イズミ達の部屋にいくと着替え中だったヒスイとイズミの下着姿…正確にはヒスイはズボン、イズミはパジャマの上着を裾から上げてブラジャーの一部と臍を突き出す姿勢の状態である…沈黙は訪れる。


「ノ…ノックはしたぞ?! へ…返事も聞こえた…」


「アキトさんなんかごめ~ん」


返事の主、ヒナタの声が洗面台の方角から聞こえる…そして廊下で待機していたはずのヴォルフが消えており…2つ奥の俺とヴォルフ、クロ―ドの部屋の扉がしまる。


「あ・・・・き・・・・・と・・・・・」


「お主も大概運が悪いの~~~~」


あきれた様子でジト目でみるヒスイとその隣でわなわなと震えるイズミ、その表情は見えない…苦笑いをし後ろに下がるアキト…だがしかし背後にやわらかい感触、振り向くとそこにはフィンが笑顔でたっており「がんばってください」と思念が飛んでくる。

逃がしてくれる気はないらしい…覚悟をきめイズミの方に顔を向けると…


女神がいた…いや、すごい笑顔のイズミが手招きをしている…




男部屋…そこでは青ざめたヴォルフを迎えるクロ―ド…右目には拳型の痣になっている。


「よかった…ヴォルフさん生きていたんですね…俺だけ逃げてすいませんでした…ってどうしたんですか?」


「い、いいや何でもない…とりあえず飯でも行くか…」


「あれ?アキトさんは…」


「…」


硝子の割れる音と遠くで重量物が堕ちる音が鳴る…そして悲鳴…偶然通りかかった人は運が悪かった…


「…なんとなく分かりました…そんなボロボロの服じゃあれなんでちゃんと着替えましょう」


「そう…だな…」


「あと…今がチャンスかもしれませんよ? 僕が先にいって話をしてくるんで誤ってしまいましょう」


「ソウ…ダナ…」


その後、ヴォルフは着替えを済ませ、クロ―ドの後ろにつきイズミの部屋へ行く…さきに入ったクロ―ドに呼ばれ中に入室すると女子4人がベットや椅子に座って待っておりヒナタがその中央の床を刺す…クロ―ドも正座させられている。

4人にお説教をうけるヴォルフとクロ―ド…クロ―ドの痣はヒナタの拳の後らしくイズミにやられる前に…いや殺られる前にヒナタが殴り庇ったようだ。



ホテルの朝食はバイキング形式になっており沢山の宿泊客で賑わっている、6人は急いで席を取ると順番に料理を取りに行った。


「この蟹美味しい!! 」


「店長このパンも焼きたてで美味しいですよ! 」


「クロード、そこの塩とってくれ! 」


「はい! 」


「クロ~ちょっとそのカレー、わけて~」


「…アキト…そろそろ席に座ったらどうだ…それじゃ犬じゃぞ…」


6人がテーブルで食事をするなかアキトは…床で朝食を食べていた…イズミに踏まれながら…


「アキトなんてどこにもいないわよ…これは私の足置き!! 」


「いてテテテテ…なんかに目覚める!! 」


アキトを踏んでいた足を引っ込め、蹴り飛ばすイズミ…さすがに裸足だが…逆にそれが不味かったようだ。


「本当にすいませんでした…二度と覗きません…」


「フン! …みんなの分のデザート持ってきて! 」


鋭く睨まれデザートコーナーに走り出すアキト…それを哀れそうに見つめる5人…イズミは怒りをぶつけるかのように食事をとっている…ように見えるが昨日の魔力行使でつかった体力を回復するために食べている。

魔力行使自体は問題は無いのだが、魔力紋と魔力文字、力の解放…一度封印を解いた場合、再度封印するのにかなりの力を消耗する。

封印しないと普段の生活に支障ができ、意図せず威嚇、武力の啓示になり無駄な争いが起きてしまう、それを防ぐために封印する行為は大事である。

余談ではあるがヒスイもそうだがリーナ王女、クエス、そしてアキトも力の封印を行っている…転生者、転移者の仲でもまれに協力すぎる能力を持つ者たち、その一つがオリジンに居たりし物。



「さて…食事も取ったし今日はどうしようか? 」


「ん~市場にいきたーい」


「そうですわね~港町特有の物もあるでしょうし」


「私はちょっと知り合いの所にでもいってこようかの」


「俺は港町のギルド支部へいってくる」


「自分はヒナタと行きます」


「俺は荷物持ちさせていただきます…はい」


予定も決まり、各自準備を開始する…ヴォルフ、ヒスイと途中で別れ一同は市場街へ歩きはじめる。



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高級ホテル、イスルス・キングスホテルの地下…会議室内…暗い部屋に集う老若男女


「昨日のあれはすごかったですな…」

「ああ…さすがに武力でどうにかなる物達じゃない」

「私、ココに向かうため歩いていたんですけど、空から男が落ちてきて…」

「形が変わった山の方で新しい源泉がわいていたな…」

「王都の方でも湧かないかしら、できれば私の店の近くで…」


上座に座る男、キング…ブリッド=キングスが咳払いをし雑談していた物達は鎮まる…


「あの男…アキトだったか我がホテルが誇るサービスを利用したと聞いたときはさすがの私も驚いたが…あんな結果になるとはな…さすがにあの光景を見ると武力行使は控えざるおえないな…」


「そうですね…今現在、賃貸屋の店舗、工事が進んでいますがその間、長期滞在希望者が宿屋に訪れているため私達の店も潤っております」

「そうね…だけどそこまで利益が出てるわけではないけど…」

「最近、王城からの睨みがすごいですよね…」


王都に宿を構える物達の意見…たしかに賃貸屋の影響で旅行客以外の収益は見込めない…だが移住者が増え、王都中が賑わう事で街や村、他国、別の大地から旅行客が訪れている…賃貸屋はまた王城から転移、転生者達などの人口、管理、調査、などの極秘任務を受けているとの噂もある…従業員達はともかく奴…いや彼女とあの男は…


キングが思考の海に囚われていると、連合会の者に声をかけられる


「キング! 次はいかがなさいますか?! 新築予定地にでもしかけますか? 」


「いや…少し様子を見ようではないか…」


「「「しかし!」」」


「くどい! 今現在、私達に不利益があるわけではない! 今回の山の件で我々イスルス側の宿、ホテルは観光地の拡大後にさらなる客が訪れるであろう! 王都側は私も支店がある身だ…賃貸屋が存在することで不利益に見えるが…定着する者もいるお陰で宣伝になり旅行客が多く訪れているのもまたたしかだ」


「「「……」」」


「しかし、いまはこのイスルスにいるのも確かだ…最後に一つ嫌がらせをしようではないか!!」


キングは連合会のメンバーに言い放つ、歓喜を上げる声


「次はどんな嫌がらせをするのか楽しみだ」

「出かけてる間になにか部屋にしかけを?」

「キングが考える嫌がらせだ…マダムや老子のようにはならないだろう」

「貴公子の奴いま成形病院に通ってるみたいだぜ?」

「あ…ついに嫌がらせっていっちゃたよこの人達」



連合会…王都リ・ワールド及びその周辺にある村、街、そこで店を構える宿屋、ホテルのオーナーが集う

そのトップに立つキング…ブリッド=キングスは転生者であり前の世界の生前は両親が宿経営、自身はホテルマンをやっておりその経験をいかしホテルを経営…マダムや老子、貴公子などの仲間を作り連合会を立ち上げた経緯がある。




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港町イスルスより離れた海、その海上…ヒスイはそこにいた…海面から背後を取り迫る大きな影、大きな咢を広げヒスイに襲い掛かろうとしていた。

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