-賃貸屋の長期休暇、海へ行こう③-

夕暮れになり街灯に明かりが灯りはじめる、砂浜で海水浴を楽しむ人たちは子供ずれそれぞれの家や、住宅に戻り、船乗りや漁師達と大人たちは市場や飲食店は昼の装いとは変わり、音楽と踊り、お酒と美味しい食事、飲み屋街へとくりだす…大人の時間だ、


ホテルの室内でイズミ達が女子トークに話を咲かせているころ…ホテルの近くにある森林が生い茂る山、そこに3つの影…


「俺の調べでは…ここら辺だ…見えたぞ」


「アキト本当にあるのか?」


「しかし…結構魔物がいますね…かなり弱い物ばかりですが…」


アキト、そしてヴォルフとクロ―ド…彼らは作戦を決行するため森林内を歩いていた…数々の魔道具を背負い、山を登る…


「この丘が目的地だ…」


「…目の前にたしかにあるな」


「どうですか?…」


「見える!! 見えるぞ!! 湯の煙そして温泉!! お前らも双眼鏡で見て見ろ! 」


騒ぐアキト、彼に促され荷物から双眼鏡を取り出しアキトが指さす方を観る


「「…おお~!」」


ホテルの屋外、研磨された石畳、そこに木造りの大きな湯船、溢れんばかりに注がれた湯からは煙あがる…湯船は二つあり、それを隔てるように塀が建つ、男湯と女湯の境界…混浴ではない限りその境界がなくなる事はない…


「そろそろ来るぞ…気配遮断を始めろ、ここまで離れていれば気づかれないとは思うが…」


「「イエッサー!!」


敬礼するヴォルフとクロ―ド

3人は気配を消し、あらかじめ持ち込んでおいた草木のついた緑色のマントを羽織りカモフラージュを行う…


「そういえばアキト…この道具どうしたんだ? ホテルに来るときには無かったよな? 」


「ああ…これらはだなホテルのサービスだ…」


「な、なに?!」


「こんなものをホテルが貸し出しているんですか? 」


「このホテルのオーナーも転生者でな話がわかるぜ…ほらよ」


二人はアキトから1枚の紙を受け取る、ご使用と貸出に関するご注意と書かれていた。

①万が一ばれた場合は当方の事を一切口外しないこと。

②お客様に怪我や命の危険が怒っても一切の保証はしません。

③用意された地図、そのポイントには多数の魔物が生息しています。

④オーナーからのメッセージを再生します。


『勇敢なるもの達よ! 挑め! 勝ち取れ! …なおこのメッセージが再生後、この書類と地図は自動焼却される』


あわてて紙を地面にすてる二人、紙は蒼い炎とともに一瞬で塵となり風に煽られ無くなる…それを呆然とみている二人だったがアキトの一声により顔を引き締める。


「き、来たぞ!! オイお前ら! 左側だぞ! まちがっても右は見るな?!」


「「了解」」


浴場前の曇りガラスに4人の影が見える、大きい影が二つに小さい影が二つ、イズミ達であろう…

胸から太腿までを隠すタオル…


「ブッ! …フィンちゃんは大胆だな…」


イズミとヒスイ、ヒナタはタオルを巻いているのに対し、フィンは胸と股を隠すようにタオルを垂らして持っている、豊満な胸と尻…たまらず鼻血を吹き出すアキト


「キタね!! オイこっちまで飛んできたぞ! 」


「ヒナタをあんま見ないでくださいね…」


ヴォルフが止血薬を手渡し、その横ではクロ―ドが鋭い目つきでアキトを睨む…


「お、おう」


そして3人が再び温泉の方へと目を移すと…温泉施設に半球の魔法障壁が現れ、景色をゆがませていく。


「チッ…空間魔法か!! 見る限り一定距離離れた場所からの視覚妨害か…」


「これじゃ見えないぞアキト!! 」


「どうするんですか?! 」


「プランBだ! 地図は頭に入っているな!」


「ああ…しかし…」


「あの地図の場所…まさかあそこまで近づくんですか?! 」


「行くぞ!! 」


走り出すクロ―ドとヴォルフ…それを追いかけるように走るクロ―ド…木や草を避け足元が悪い場所にもよらず何でもないかのように疾走、戦闘能力、スキル全てを使用し物音も無く駆け下りる。


「なんて無駄な能力の使い方なんだ…」


「「平和なんだから仕方が無い! 」」


「アキトさんはともかくギルドマスターが言うセリフじゃないですよね?! 」


そして3人は温泉の真下、崖の上には生まれたままの姿の4人がいる位置…


「次に使うのはコレだ!! 」


「「それはいったい?! 」」


「まどうすこ~~~ぷ~~~~~~」


変な声で言うアキト、その手には小さいレンズが付いた管、手元のハンドルを回すと伸びていき遥か上の浴場が覗ける物、作りはとても簡単そうだ…しかし魔法詠唱等を使えば魔力量や発光でばれてしまいかねない…魔道具ならばそこら中で使われているため小さな反応ではバレない、自身たちの近くにもホテルが設置した魔導照明がいくつもある。


「よし、上げていくぞ…」


「もう少しだな…」


「……そろそろゆっくりのほうが」


「くっ……肩しか見えない…位置が悪いのか…」


その頃、イズミ達は…


「く~~~気持ちぃ~~~~~~生き返る~~~」


「イズミン…おばちゃんぽいぞ…」


湯船に漬かりながら背伸びをするイズミ、桶に果実種の入った瓶を入れてもってくるヒスイ、温泉側からみる光景、見上げれば綺麗な夜空、目の前には自然豊かな山と海、覗き対策に視覚妨害の魔法障壁もあり、裸を覗きみされることはない…不具合で障壁貼られるまで3分はかかると注意書きがあったが待てずに4人は温泉施設へ入ってしまった


「フィンもおっぱい大きいよね~~~」


「そういうヒナタさんも小柄な背のわりに立派なの持ってるじゃないですか~」


「そうかな~~? でも大きいと肩がこるんでしょ? 」


「そうなんですよね~重くって姿勢が悪く…ごめんなさい」


胸の話をしているところへイズミとヒスイが二人に殺気と威圧を込めた視線を送る。





「「……くっ!」」


「バレたか?!」


「いや…大丈夫だ…クロ―ドは?! 」


「逃げやがった…」


不意に上で殺意と威圧を感知し4人にバレたと思った2人だったが自分たちではないと気が付き息をつく…がクロ―ドは脱兎のごとく逃げ出していた…


「やはり0距離に近いこの場所では障壁も効果を為さないようだな…


「監視装置に気を付けろ…」


「み、見えたぞ!! おおおおおおおお!! 」


「お、おい、俺にも見せろ!! 」


「あ!馬鹿… 」 




「いい眺めですよね~~~~」


「そうだよね~~~~~」


「二人とも…覗かれないとは言え…その格好は同じ女子の私でもグッとくるぞ? 」


イズミとフィンは胸を突き出しながら景色を眺めていた、お尻を湯船側に突き出しながら…それの光景を荷替わりで見るヒスイ…ヒナタはどこからもってきたのかアヒルのおもちゃで遊んでいる。


ガチャン…下の方で物音がする



「なに? なんの音?! 」


「下に何かいるんですか? 」


「いないね…」


胸をタオルで急いで隠し落下防止の柵から崖の下を覗くが誰もいないが…いや


「何か落ちているね…」


「魔道具ですかね…」


「どれどれ…よしうまく浮き上げられそうじゃぞ…」


「ん~~~何かあるの~~~~? 」


ヒスイが重力操作で崖の下にあるものを持ち上げる、それを眺める3人…そして目の前に


「これ……あれよね…」


「魔道具ですか? 」


「これは除きようのスコープじゃな…おお! 結構鮮明に見えるぞこれ…」


魔道具を見たり触ったりしていると獣耳をぴょこぴょこ動かしあたりを見渡していたヒナタが遠くの位置を指刺す


「てんちょ~~~あそこ~~~~茂みをかき分ける音となんか動いてる~~~」


イズミは魔法陣を展開、探索系魔法を指刺す方向へと向ける…


「フィン!! 気配遮断系のスキル、魔法を使っているみたい…あそこを中心に範囲でアンチマジックをお願い!!…」


「分かりました 」


「ヒスイ! 私にブーストかけて! 少しでも相手の能力を上回ればスキルでも看破できるはず!」


―――ヒナタが指さす方向はどんどん上へいくかなり早い、犯人はだいたい予測はできるが…やっぱりか


「見つけた…あのバカあああああああああああああああああああ」


「あらあら…」


「クロはいないのか~残念…」


「ギルドマスターも一緒とはのう…」






山を全力で駆ける、邪魔な枝や木をどけながら走りぬくアキトとヴォルフは滝のような汗を流しながら必死に遠くへ逃げようしている。


「やばいやばいやばいやばいやばいやばい!!」


「おまえがすぐ渡さないから!!」


「いやだってよ!! 」


「お前の話にのるんじゃなかったぜ!! 」


「ハゲも嬉しそうにしてたじゃねーか!! 」


「ハゲっていうんじゃね~~! 」


「「!!」」


疾走する二人の後ろ、先ほどまでいた方角で魔力の反応と発光…


「ばれたか! 」


「くっそ、あの魔法陣はアンチマジック系だぞ?! 」


「俺はスキル系だが…お前は? 」


「魔法だ… 」


「「あ、バレた」」


「同時にバレたという事は…くそ! ステータスを増幅したのか!! 」


「お…おい…あれはちょいとシャレにならないんじゃないか? 」 


ホテル上空と地上に強大な六芒星…それが温泉浴場のある所へ重なり…小さな魔法陣が…大量…

壁のように現れる…ホテルの従業員、利用客も窓から、入口から出てくる…


「おいなんだ?! 」

「こ…これってサンダーランス? でもこんあ大量の…」

「どうやら誰か…そういえば利用客がいましたね」

「これって殺さないですむのか? 」


逃亡を試みようとしていた二人は足を止める…


「あ~~~これは~~~~」


「全力で守りを固めるぞ!!」



魔法の根源、温泉施設ではイズミが魔法の行使、発動目前としていた。

帯電し紫電を纏う髪、目標へと指を広げ向ける手には膨大な魔力が集まり始める…

イズミの裸体には魔紋と文字浮かびあがっている…


「い、いやイズミン? ちょいとそれは…」


「ん~~~シビシビする~~~~」


「ヒナタ? 体に悪いから湯船からでていたほうが…」


「一回死ねええええええええええええええええええええええい! 」


城壁のように並んだ魔法陣を砲門とし放たれる雷の槍…一つ一つの見た目は中級魔法のサンダ―ランス、しかし通常の物ではなくその実態は上級…プラズマランス、そしてイズミの右手から放たれる一筋の閃光とプラズマ、魔法砲撃…雷撃魔法ミョルニル、…それを避雷針として待機状態となっていたプラズマランスが射出される…


イズミのオリジン魔法…トールランパート


閃光と数々の轟音、鳴りやんだ先に残るのは二つに分かれた山と元々見えていたものとは別の一望できる海と砂浜…その日を境にホテルに隣接していた山は双子丘となり…港街イルセアに新しい観光地が生まれた。

新たに湧き出た温泉を利用した足湯施設、そして砂浜、山に住んでいた魔物はいなくなり、鳥や鹿、動物達が暮らすようになったためホテル側としても女湯は大人気の場所に変わった。

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