-受付さんは独り暮らしがしたい-

今日も冒険者で賑わう冒険者ギルド、ギルド横の解体所では魔物の買取、解体を行っており魔物の骨や、角などの素材で新しい防具や、武器を制作依頼、持ち込みを行い作成し戦力の強化と強さの象徴とし、また魔物の肉は食材として食べることもできる。

王都ラ・ワールドの周辺には山あり海ありダンジョンあり、武器屋、防具屋、服屋、そして飲食店では様々な商品が取り扱われており重要と供給がバランスよく行われている。

ギルド内では多くの物達が依頼掲示板を眺めた受注し、テーブルでは冒険譚、眼にしたユニークモンスター、他愛のない話で盛り上がっている。


「昨日はよー17階層までいったんだがな~」

「見てよ新しく購入したのこのビギニアーマー!」

「ロ―ウェルのとこついに子宝に恵まれたってよ!」

「こないださ…賃貸屋いったら竜王様が来てたぜ」

「あの子、可愛いな…ちょっと話かけてこようかな」


そんなギルドの受付で小柄な少女…ではなく男性、金髪と高い鼻、蒼い目、エルフのような綺麗な容姿

受付兼相談役のグロ―ドは事務処理をしつつ予定表を確認していた。


-------------


「明後日は休みか…」


予定表に書かれた赤印、もうすぐ休みがやってくる、休みと言っても寝起きはギルド内の寮、食事は同じ寮に住む者たちと合同、トイレやお風呂も合同、部屋は二人部屋…休みぐらいは一人のんびり過ごしたいな…


「実家だと親父がうるさいし、ギルドの寮に入ったけどそろそろ一人暮らし考えるかな~」


親父は王城で騎士長をやっている、小さい頃から剣や戦闘の訓練をさせられ母も同じく騎士だった。

毎日続く訓練、訓練、訓練…「お前も騎士になれ! 」「お父さんのような騎士に」何度聞かされたか分からないまるで呪いだ…そんな両親に俺は反抗し家を出る形で冒険者になり旅に出た。

ダンジョン探索や傭兵じみたことをやりながら冒険者として活動しその後この王都へ帰ってきた。

母は俺をみとめ仲直りし昔のような家族として接してくれるが未だ親父は認めず騎士の道を歩ませようとする…いまだ嫌煙の仲だ。

今はいろいろな縁があり冒険者ギルドの受付兼相談役として雇われている。


「クロ―ドさん!クロ―ドさん!手が止まってますよ!列ができてます!私ひとりじゃ…」


「あ、ごめん」


気が付いたら冒険者の列ができていた隣で忙しく処理をしている同僚に声をかけられ気が付いた、どうやら長く考えを巡らせていたようだ…まずは今日の仕事だ!!もうすぐ昼休みそれから考えよう。

俺は急ぐように列を処理していく。


「次の人どうぞ~」


「あの君、今日この後休憩でしょ?ちょっとお茶でもどうかな…」


「いいえ、結構です」


「そう釣れないこと言わずにさーいこうぜ~」


冒険者の男は俺の手を取り連れて行こうとする…


「おい・・・いい加減に…


またこの手の輩か…俺は深いため息をついてそろそろぶん殴ろうするとギルドの入り口に銀色の髪とケモ耳…赤い目が少し顔をだしてこちらを見ている…隠れている口元はニタニタ笑っているのに違いない…どうやら昼休みみたいだ…隠れるのをやめてこちらへくる。


「クロ~~~~~~~~~~~~~…おじさん邪魔~~~~~!」


俺に声を掛けてた男を蹴り飛ばし…グッジョブだ!吹き飛んだ被害者…冒険者は仲間達に引きずられて退場していく。そして蹴り飛ばした加害者、賃貸屋に努める獣人の女の子ヒナタが…


「ご飯行くよ~ほら早く~今日はクロのおごりだ~」


「…なんで俺のオゴリなんだ? 昼飯にはいくけれど…」


「不埒な男に言い寄られる健気な女の子を助けたのだよ? それぐらいはいいよね~」


ギルド内の同僚、冒険者、通りの人々がこちらを見ながら笑っている、いつもの光景だ…が…


「俺は男だ!! 」


「痛い~痛い~~~頬をつねるな! ひっぱるな~~~」


俺はヒナタの頬をつかみながらギルドの外へと連れていく。

財布の中にいくら入ってたかな…二人分ぐらいはあるだろう…カエデさんとこのランチかラーメン三郎にいくか…悩むな…


「あ~も~痛いじゃないか~もどらなくなったらどうするんだよ~」


「そんなに強くはやっていない、今日はカエデさんとこのランチにするか?」


「スパゲティーと~サンドイッチセットと~ピザと~~」


「一つにしろよ…」


「え~でもカエデさんのところ私達は無料で食事させてもらえるから~」


「…無料でも限度があるだろ…ああそうかイズミさん繋がりで無料だったんだな…っておい」


「こないだも、その前も、お前がオゴリの時はカエデさんの店だったよな…」


俺は再びヒナタの頬をひっぱりあげて問い詰める…


「痛い~~バレた~~~クロ分はちゃんと払ってるもん~ちゃんとおごってるもん~~~~」


「…なんか納得いかないけどならよし」


涙目になりながら頬をさすってるヒナタを連れて俺たちはカエデさんのお店カフェラウンジ【HIGURASHI】へ足を運んだ。イズミさんのお勧めでギルドの仲間達やヒナタと食事に来ている。

昼にはランチを出し夜にはお酒、異世界料理と美味しいお酒はオープンから人を呼び王都でも人気の一店だ…俺は楓さんの店のピザが好きだ他の店とは違いチーズの種類、パンの生地から好きなものをチョイスし焼いてもらえる。


「カエデさんこんにちは、ヒナタと二人、席あいてますか?できれば禁煙席で…」


「いらっしゃーい! 本当に仲がいいわね二人! 」


カエデさんはいつも元気だ、店内を見渡すとどのテーブルも満席、外のテラス席…追加の椅子とテーブルを置いて中央通りにはみ出した形で席を増やしているが満席…


「もうすぐ空く場所あるからまってて~」


「「はーい」」


ヒナタと二人、互いにメニューを見ながら順番を待つ


「そういえば、ヒナタがいま暮らしている家ってどうなんだ? 」


「ん~~店から近くって~日当たりもいいし~フィンも隣に住んでるよアパートタイプの2F建て、店長拘りのお風呂とトイレは別で床が魔道具で温かくできるから冬場も温かい、コタツと蜜柑は最強~、あれは外に出たくなくなる~」


「ふ~ん」


「私達は1階には私とフィンと空き室、2階は竜王さんと冒険者が住んでるけど? な~に~興味あるの~?」


「ああ…そろそろギルドの寮をでようと思ってな~」


「そうなの? 同じアパートくる? 空き室はあるけど、張り出してあるから埋まるかもね~」


「まじか…そうしたら昼休み終わったら確保だけしてもらえるかイズミさんに聞いてくれないか」


「お、決めるの? 決めちゃうの? わかったよ~店長に言っとく~」


よし、あとは実際に見てみてよければ直ぐに契約して引っ越しの荷物まとめる準備ししないとな…あとは家具も新調して…いままで相部屋の奴に遠慮して買わなかった大き目の本棚とか置けるな…


「二人とも席空いたよ~奥のテーブルどうぞ~」


「あ、わかりました~~」


「よし、今日はピザとスパゲティーとドリアにケーキにしよう!」


「そんなに食べれるのかよ…」


ヒナタにあきれつつ案内されたテーブルに向かい歩き出す…あれ…イズミさんとギルマス…こちらを見てニタニタと笑っている…あれ…席に案内してくれているカエデさんや従業員達も口元を抑えている…


なにがそんなにおかしいんだ?!

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