-ラーメン三郎 異世界食材で-

王都の中央通りに並ぶ店の数々…その内の一つにまもなく開店予定の店がある。

店内の広い厨房には一人の男と…包丁…三郎と虎徹が一つの食材を前に腕を組み考え込んでいる。


「三郎…これ…どこで手に入れたんだ…」


「…嫌…あの…こないだな…降って来たんだ…ここから東の住宅街に…」


「そういえば…なんか騒いでたな…」


そう、二人の前には大きい、とても大きい食材の1部が鎮座している…ドラゴンの足だ


「とりあえず全部は置ききれないから足だけ出してみたんだけど…」


「いやいや…落ちてきたのは解る! が入手経路はどうなんだ?! 普通は回収されるべき場所があるだろ?! ドラゴンの肉といったら高級だろ、落ちてきた家の家主か商人か 」


「それは…王城に回収されると聞いて、ほら自分たちが王都に来た時にギルドや王に謁見したりしただろ? ラーメン作ってみたいからドラゴンの肉すこしでいいのでくださいと頼んだらくれたんだよ」


「マジか…」


「転生者、転移者から伝えられたラーメン屋は数あるけれど…本場が食べてみたいそうで頼んだら一つ返事だったよ」


「……ギルドマスタにしろ王様にしろこの王都はなんつーか、軽いな…さすが転生者と転移者が多いだけあるな、謁見した際に知り合ったイズミの姉ちゃんも大概だしな」


「そうだね…まさかちゃんとしたラーメンが食べたいだけで無償でココを貸してくれたものね……本人が来たらラーメン毎回無料という条件だけど…」


「だけどまぁ~おかげで直ぐに店が開ける目途が立ってよかった、本来なら冒険者やって金稼いで、死に物狂いにならないと行けないところだったしな…」


賃貸屋をしているイズミさんは自分と同じ転生者で自分達にギルドマスター、王様と3人でいろいろとこの世界の事を教えてくれた。この世界のルールやダンジョン、生活の方法、転生者と転移者のふるまい。そしてこの異世界、ユクド・ヘイラには転移者や転生者がこの世界の大昔から存在し、この世界本来の陣族と転生、転移者との子供、その子孫もいる…勇者や魔王も種族扱いと聞いたときは笑った。


この世界では各種族と戦う事は許されていても魔物や家畜以外の【命を奪う】ことは禁じられている。


各大地に存在する王国で管理されており万が一、故意に命を奪った場合は重罪人となり生涯を牢獄ですごす事になるだろう。この世界のどこかには重罪人だけを収容する島があるらしい。


「さて…ドラゴン肉のラーメン…とりあえず足を出しているんだ腿肉でチャーシューでも作ってみるか! あとは試しにスープだスープ! 竜骨スープ…どんな味になるんやら」


「了解! ご指導宜しくお願いします」


「おうよ! さー俺を握れ! 勇者の剣(包丁)の切れ味みせてやるよ! 」


鍋にドラゴンの骨…そしてコカトリスの鶏ガラ、虎徹秘伝の…etc、醤油とスープを作りつつ、別の鍋でニンニクと生姜をスライスし青ネギを混ぜて火にかけている間にドラゴンのモモ肉を手頃な大きさに切り分け糸でしばる、圧力鍋に油を熱しながらモモ肉を香料、ハーブと一緒に焼き上げあるそこに先ほどのニンニク、ショウガ、青ネギを混ぜて新たに煮る


「とりあえず…できたな…」


「そうだね…]


「試食してみて…どうするかとりあえず王とギルマスと、イズミさんとこ持っていくか…」


「いつもの店のラーメンならいざ知らず…未知のラーメンだからね…普段通りのも持っていこうよ」


「そ…そうだな…あの人たちが食べたがってるのは俺の店、本来のラーメンだからな」


「ドラゴンの肉もまだまだあるし当分は試行錯誤だね!」


「それと…いい加減店の内装を仕上げないとな」


二人は厨房の外を見る…店内は厨房以外まだ未完成だ…店を借りる際、内装や食器などすべて用意してくれるというイズミさんの話を断り、「職人は全てひとつひとつ自身で選んだいいものだけを使う」とかっこいい事を言ったものの…この有様だ…食材に関してはほとんど元の世界と変わらない食材や調味料が再現されており苦労はしなかったが…


「誰か…オーダーメイドしてくれる鍛冶屋さがさないとな…」


「イズミさんあたりに聞いて…だめだ…あの人自らやりそうだ…」


「違いねーな…」


「圧力鍋なんか頼んでいないのに瞬きしている間にで来たもんね…」


「俺らも休みの日や時間みつけてダンジョンに行くか…なにかスキルが生えるかもしれんし」


「ギルマスにわたすついでに冒険者登録もしないとね」


二人は出来たラーメンを待ち人に渡すため準備を開始した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る