ONE GAME

蘇来 斗武

そこから出てくるのは一人だけ。

「ここか」大きな洋風の城を見上げながらルークは言った。呆然と立ち尽くしていると、後ろから遅れて二人がやってきた。

「ちょっ!ルーク速すぎ!セルトもそう思うでしょっ!?」アイシャは共に遅れてきたセルトを見て言った。セルトは息を切らして寝転んでいる。

「ほんと、さすがに速いわ。誰もついて行けねーっての」

 目の前にある城の周りには広大な草原が広がっていて、風に吹かれてキラキラと光っている。視線を落としているアイシャと寝転んでいるセルトとが起き上がり

 城を見上げた。

「うおー!すげー!何人住めるんだ?これ」

「すごいねー、この中にお宝があるんでしょっ!?見たーい!」

 二人とも目を輝かせている。つい先ほどまでルークが先導していたが今度は二人がルークの前を歩き、振り返る。

「早く行こーよー。ルーク」こちらに向かって手を伸ばしているアイシャをセルトは心配そうな目で見ている。

「でもよー、大丈夫なのかな。ここって何人で入っても出てこられるのは一人だけなんだろ?」

 しかし、僕は全く心配していない。僕達はこれまで100ヶ所以上の場所を攻略し

 様々な財宝を手に入れてきた仲間だ。ここでも皆の力を合わせれば、どんな困難でも乗り越えられるはずだ。

「平気だよ、僕達なら。よし、それじゃあ行こう!」

 僕は城の重たい扉を開けた。

 そこは、赤いカーペットが続いていて左右にいくつもの部屋がある。城に足を踏み入れると背後で扉が閉まった。

「うお!閉まったぞ」セルトは扉に手をかける。「マジか······開かねーぞ」と顔を青くしている。が、別に驚くようなことではない。ここまで大きな城なら出入口でいりぐちが他にあってもおかしくはない。

「きっとこの先に他の出入口があるんだよ。財宝を探してそこを目指そう。」冷静にルークは言った。

 とはいえ、どうしようか。財宝を探してなんて言ったものの、あてがあるわけでもないし、手掛かりも今のところまるでない。辺りを見回してもそこにあるのは左右で5つの扉とその奥の下に続く階段だった。

 しかし、「ちょっと待って」危ない、見逃すところだった。数メートル先に一枚の紙が落ちている。

 近づいて紙を拾い上げると、そこにはこう書いてある。


 ・まず、このフロアにある部屋に各自、別々に必ず入ってください。心配しな  くても、その部屋からはすぐに出られます。

 ・その後、奥にある階段で地下へと進んでください。

 ・それでは見えない敵に殺されて下さい。


「何だよこれ」セルトはいぶかしむ。「不気味だな。見えない敵って幽霊てことか?」セルトの顔色がいつもより悪い気がするが気のせいなのか?

「何、セルト、もしかしてビビってんの!?」

「はあ!?んなわけねーだろ!」気のせいではなかったらしい。

からかうアイシャと遊ばれるセルトをなだめながら、さっき拾った紙をくしゃくしゃにしてもう一度捨てた。ゴミはゴミ箱に?ならせめてゴミ箱くらい用意してくれてもいいんじゃないかな。

「とりあえず他に方法がない限り、ひとまずその紙に書いてあることに従おう。僕は······そうだな、右側の一番奥の部屋に入るよ。二人は?」

「じゃあ俺は左の一番奥の部屋な」

「私右側の手前の部屋がいい!」

それぞれ入りたい部屋を決めた。おそらくどの部屋に入ってもさほど変わらないのか。入ってみなければ分からない。


「みんな決めたね。それじゃあ、そうだな······せーので同時に入ろう」

それぞれの扉の前に立っている二人を見て言った。二人とも緊張している様子はあまりない。

「せーのって、なんか子供っぽいな!」

からかうようにこちらを見るセルトを無視して言った。


「それじゃあ、入るよ。せーのっ!」

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ONE GAME 蘇来 斗武 @TOM0225

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