第14話 探してる曲


多分ラジオで聴いたと思うんだけど その曲がかかった瞬間だよ


初めて聴いた曲だってのに あのリズミカルな曲調やソフトだけど力強さを感じる歌声にビビビってきて 一瞬にしてその曲のファンになったんだよね


給料も入ったばっかだし まぁボーナスは1500円ぽっちだったけどさ もうこのCD買いだわって感じで曲名や歌手なんか知んねぇけど とりあえず近くにある小さいCDショップへ車を走らせた


入口付近にある新作とかランキングんとこチェックしてみたけど それらしいのは見当たんなくてさ


何しろ曲名どころか誰が歌ってんのかも分かんねぇしだから 思いきって店員の目の前で鼻歌をぶちかましてやっかってなったよwww もうこんなの勢い任せが1番いいからねwww


レジに立ってる店員に『探してる曲あんだけどさ 曲名も歌手も知んないんだけど 今から鼻歌すっから聴いてくんないかな?』って言ったら 普通に動揺することなく笑顔で『あっ いいっすよ』って余裕そうに答えてくれてほっとした


そんでアタイが『ラララ』って感じで鼻歌してたんだけど やっぱり分からないもんだよね ちょくちょく首をかしげたり頭をかいてたよ


一応サビが終わるまでは諦めずに歌ってみよって続けてたら そいつ分かり始めたのかサビのちょっと前で『んっ?』ってなったんだよ


そしたら急にリズムに乗せて頭を揺らし始めちゃって サビに入ったとたん指パッチンまで鳴らしてくっから アタイも体を揺らしながら夢中で鼻歌してたよ


この曲は人気があって誰もが知ってるんだろうね 横のレジにいたプロレスラーみてぇな大男の店員までも 机をズンドコズンドコ叩きながら聴いてて サビが歌い終わったら『せいやっー!』って大興奮してたwww


てかこのラブソングに近い曲をどうやって聴いたらお前のようにお祭り気分になれんだよwww 


何とか歌い終わって笑顔で店員に『今のCD買うからお願い』って伝えたら なんか店員が『ん~・・・ すみません 正直分からなかったっす』って言ってきやがるからひっくり返りそうになった


あの指パッチンとか一緒に楽しんだ時間は何だったんだよwww


横の大男に聞いても両手を挙げて『さぁね』みてぇなリアクションしちゃってさ だったらお前は『せいやっー!』すんじゃねぇよwww


お前のせいで家に着くころにはあの曲なんてすっかり忘れちまって 全く関係ない『せいやっー!』の叫び声しか記憶に残ってねぇよwww

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