けものと
しょーじ
ストレンジ・エンカウンター
ビギニング・ワンロード
「はっ……はっ……」
セルリアンハンターである
木々の合間を、土から土へと、根から根へと。
隣の方には黄色い毛皮が見える……サーバルが並走しているのだ。
私よりも息が上がっているように見えるが、その脚力は中々のもので、1度の
つい先刻の事。
私が気付いて戻った時には手遅れで、かばんが使ったのであろう小道具と、倒れたサーバルが残され、遠くの方には黒い影がゆっくりと動いていた。
サーバルを埠頭まで運び、キンシコウ、リカオン、ボスと合流する。
しばらく経って、彼女が目を覚ましてこう言う。
早く助けなきゃ、私1人でも行くよ。
予想の範疇から出ない言葉であったが、それは私の心に突き刺さった。
あの異常個体の表皮は頑丈という一言では表し切れない程の硬度を誇っている。
通常のセルリアンが怯む程度の攻撃ではビクともせず、キンシコウとリカオンのサポートを受けて全力の一撃を叩き込んでも、
残念だが、切り替えろ。
私1人ではどうしようもなく、セルリアンハンター3人がかりでも歯が立たない。
そんな奴を相手にサーバル1人が加わったところでどうにかなる問題ではなく、犠牲が増えるだけなのは明らかである。
ただ、無力だった。
そもそも私達ハンターは、他のフレンズ達をセルリアンから護る為に結成された。
しかし今、その護るべきフレンズから力を借り、そして失った。
だからといってこれ以上の犠牲を許容できる訳ではないのだが、かばんを失ったのは私の責任だと思い、サーバルに何と声をかけていいか分からなかった。
そして口から出てきたのは冷酷で、無慈悲な言葉だった。
それを聞いてサーバルが何を思ったのかは分からなかったが、間を置いてボスに助けを求めた。
すぐにサーバルは、ボスが口を利かない事を思い出すのだが、次の瞬間、完全に意表を突かれてしまった。
サーバル、ココハ僕ニ任セテ。
君トヒグマハ、カバンヲ。
ボスが、喋った。
いや、既にボスの声は聞いた事があった。
と言うのも、先程の作戦会議の前後で、かばんと話しているところを見ている。
サーバル曰く、かばんとしか話をしないのだという。
そんな事を言っていたサーバル本人が最も驚いていたのだが、何故話をしてくれたのかサーバルに問われたボスの回答が印象的だった。
ヒトノ緊急事態対応時ノミ、フレンズヘノ干渉ガ許可サレテイルンダ。
生態系ノ維持ガ原則ダカラネ。
サーバルはボスが言っていた事の意味を理解していなかった様だが、つまり、ヒトが危うくなればボスは喋るし、そうでなければ喋らない。
ヒトという動物の概要については以前、
他の動物よりも弱っちいが、器用で、頭が良い。
その昔図書館を造り、温泉を、ロッジを、遊園地を造った。
フレンズをセルリアンから護るのも、ヒトの仕事だった。
-そして私達フレンズの姿は、動物をヒト化させたものだと-
かばんは、その知恵で今回の作戦を立案し、自身の
かばんは知っていたのだ。
自分1人では力不足で、
何かを成す為には、何かを捨てなければならないという事。
そして最後には、全てを捨てた。
パークにヒトが沢山居た頃、どうやって弱い力でセルリアンからフレンズを救っていたのか疑問だった。
だが、かばんの行動がそれに対する回答なのだという気がする。
そして、今まで沈黙を保っていたボスが初めて
それが私の中に1つの思いを芽生えさせた。
分かった。
お前達の目線で動いてみよう。
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