マリアナ海溝より

こばん

第1話 寂しくて

好きな人の子どもを孕んで、家庭環境は良好、仕事も休職している。

何も問題はない、私が気分障害なこと以外は幸せ絶好調だと思う。

バツイチ子持ちの私に再婚と出産の機会をくれた夫には文句は何もないし、私には出来すぎた夫だと思っている。毎日欠かさず行ってきますのキスをしてお風呂も一緒の幸せ新婚さん。

でも、そこに何故か安定しない私がいる。


過去モラルハラスメントの被害にあい、鳴り止まない電話や罵声、人格否定にあいボロボロになった精神は今だに酷く不安定で自分で上手くコントロールできないでいる。

夫の協力でかなり良くなってきてはいたけれど投薬は欠かせずにいた。

そんな中、妊娠がわかり担当の精神科医に処方を変えてもらう為に相談したが精神科医に怒られデタラメな処方をされてしまい病院に通う気力がなくなりカウンセリングも通院も投薬も止めることになった。

いきなり断薬したことで不安定になりツワリも始まり「産むか、産まないか」を家族で向き合わなくてはならなくなったことを反省している。私は家族になんて負担をかけてしまったんだろうと。

今もこうして寝れない夜に罪悪感を持ちながら気分障害と背中あわせで生きてる、決して正面から向き合っては生きていけない。生きてはいけない。

目の前にある幸せだけを見て心地よく過ごせたら幸せなのに。

これ以上夫に負担をかけたくないし母として強くありたい。だけど、目まぐるしく変わる自分の気分の高低差が許してくれない。

マリアナ海溝にいる時に素直に助けてと言えたら苦しいのが終わるのか。

膝を抱えて1人気分障害に寄りかかって泣いている。

寂しいからとセックスを強請っても埋まることはないのに私はそれしか出来ない。

大丈夫明日はきっとエベレストにいる、大丈夫きっとすぐに戻る、大丈夫もっと辛い日もある、大丈夫私には愛する子どもも夫もいる。


横で寝ている夫は現実にはいなくて、辛くて苦しい私の作り出した妄想だと言われたらそうかもしれない。

私のことを置いて行って寝てしまった。私も一緒に連れて行って。

ここは暗くて怖い。

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