短編集
りこと
冬の夜
冬になると、全ての時間が止まるんじゃないかな、と思う。
曖昧な空模様。
張り詰めたような冷たい空気に白い息。
深夜に出かけてみれば、私一人が空間に取り残されたようで。
冬の夜は長いから、いつまでも夜空を眺め続けていられる。
えのぐのような空の紺色、
点々と光る星。
それは、たぶんそのまま私の目の中で輝いてるんだろう。
家に入る。温かいスープを飲みながら考え事をする。
日付が変わった。布団にもぐる。電気を消す。
じんわり暖かくなっていくのを感じながら、夜の闇に包まれる。
そして不意に、呑み込まれる。涙を落として、目を閉じる。
堂々巡りを続けて数十分。
意識が曖昧にぼやけていく。
気が付いたら、カーテンの隙間から冷たい光と肌をつつく空気。
カーテンを開けると、そこにはまた白か青か、灰色なのか曖昧な一日が始まっていた。
どこかの瞬間で切り取ってしまいたい。時が止まればいいのに。
それでも止まれない。
進む。進む。進む。
お願いだから、冷たい空気を私と一緒に閉じ込めて。
桃色の風が訪れる前に、早く。
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