第11話 遠足へ行こう!(トラブルへの道)
「明日は遠足です!」
と、元気よく先生、
永田先生はボブカットの髪を茶髪に染め、黒縁の眼鏡をかけた女性である。
歳は20代前半で、生徒達にも非常にフレンドリーに対応してくれるので、先生、生徒共に人気が高い。
「おやつの値段の制限はありませんが、食べられる量にしないと重くて大変になりますよ?お菓子は先生も持っていくので交換もしましょー!!!」
「「「「はーい!!!」」」」
男子だけでなく、女子も大きな返事をする。
いつもしっかりしていて頼りになるので、女子からの人気も高い。
と言うか、入学してからこの方、先生の悪口を1度も聞いたことがない。
「明日の遠足は山登りをします!......ってしおりを見ればわかるよね。今の時間は遠足で行動するグループを決めてもらいます!そうだね〜、だいたい5人くらいかな?」
なるほど、5人ということはあと1人なわけか。
僕の場合、メンバーが毎回固定される。
そう、こちらに笑顔で歩み寄ってくる美女3人がいるからだ。
「歩くん!」
「あゆくん!」
「......歩様......!」
「でしょうね」
未来、美月、香菜の順番で僕に声がかけられる。
言わなくても君たちが何を言いたいのか僕にはわかるよ。
「一緒のグループになりたいんでしょ?いいよ」
もしここで拒否でもしたら、誰と組むのか聞かれ、そいつが虐殺されかねない。
「んじゃそこには俺が入るわ、何かと腐れ縁だしな」
豪快に笑う関。
どうやらこの生活にも慣れたようだ。
案外図太い性格なのかもしれない。
「そして、今回の商品は!」
「「「ごくり......」」」
どこぞの社長のような高い声で机をバン!
と叩く関。
ん?
今回の商品?
なんのことだ?
「歩が登校時に立ち寄ったコンビニで買ったこの赤ペン!1日使って使い勝手が悪いから頂いた商品です!」
「使いたい......」
「舐めまわしたいです......」
「......食べたい......」
美月と香菜はともかく、未来が言った『使いたい』の意味が赤ペン本来の使い方であると信じたい。
「さぁ、早い者勝ちですよ?なんとこちらの商品今なら1000円!」
「いや待て待て!それ原価200円だぞ?高くないか?そんなの買うやつどこにも......」
「「「安い!?買った!!!」」」
「......」
いましたよ、ここに真の馬鹿たちが。
それで安いってどういう金銭感覚してるんだ?
「そろそろそこの真面目ぶって、ですです言ってる痛いキャラの女と、陰キャぼっちは歩くんと脈がないって気づいたら?」
「いまいちキャラ立ちしてないビッチと髪切りサイコ女はあゆくんに嫌われてるって気づいたらどうですか?」
「......太った醜い豚とクソアホ毛が歩様と喋る度にイラつかせてるって気づいてるの......?」
あぁ、始まってしまうのか......。
「あ、ちなみに僕はそんなことこれっぽっちも思ってないからな」
僕の言葉を聞き、更に睨み合いが激しくなる3人。
「〇ろす!」
「〇してあげます!」
「......斬り〇す......!」
こんな調子で遠足の時、僕の体が持つのか?
――――――――――――
そう思っていた時期が僕にもありました。
「やばいな、結構本格的に......」
「遭難しそうなん......」
「もうとっくに遭難してます―――先生」
そう、僕達は遭難してしまった。
隣でまだこの状況を理解しておらず、虚空を見つめている永田先生とともに。
経緯を説明すると、山の中腹まで来たところで先生が僕らのグループに来て一緒に喋りながら歩いていた。
どうやら永田先生は全てのグループに順番に入って生徒達の親睦を深めているようだった。
こういうところが好かれる点なのだろう。
僕に好意が無いと分かっていたのか、未来と美月と香菜は僕と先生に程々の距離を取らせながら談義していた。
......主に僕の話だが。
しかしその時事件が起こった。
永田先生の歩いていた足場が悪かったのか崩れてしまい、助けようとかばった僕も一緒にコースの外に落ちてしまったというわけだ。
「とりあえず永田先生は落ち着いてください」
「はえ?あ......ごめんなさいね、もう落ち着いたわ」
ふるふると頭を降ったあと、顔をパン!
と叩く先生。
「先生、連絡できる端末は持ってますか?」
僕らの高校はスマホなどの携帯端末は授業や、行事の前に全員回収される制度があるので今は手元にない。
「任せて!あ......壊れてる」
先生が取り出した端末は、落ちた時の衝撃が加わっていたようで、使用することが出来ないくらいの有様だった。
「僕に仕掛けられた盗聴器も......あちゃーこれはダメだな」
数個盗聴器を取り出すが、どれも壊れていた。
「......何でそんなものがあるの?」
特にお堅い人でもないので、注意はされないだろうから、僕の学校生活について永田先生に話すことにした。
「―――は、ははは、そういう人って本当に現実にいるんだね」
顔をひきつらせながら笑う先生。
まぁ確かに普通ではないな。
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