第10話 好きになった理由と覚醒

「そういえば聞いてなかったけど、なんで僕のことを?」


キスをしようとした香菜に対し、怒り狂う未来と美月をなだめながら質問する。


「......ウチ、地味で人と話すのも苦手で、暗くて、他のみんなにグループに入れてもらえなくて......」


今となっては引く手数多だと思う(主に男子から)。

まぁ、グループを作る際、クラスメイトたちもチラチラと様子は見ていたようだが、初対面かつ、オドオドしている香菜にはなかなか声をかけづらかったのだろう。


「......でも歩さんは違った、ウチに声をかけてくれた!......みんなが声をかけてくれなくてすごく寂しくて、喋りかけられないウチが嫌になったけど、歩さんだけはウチを仲間に入れてくれた!......仕方なく入れてあげるんじゃないって思いが伝わってきて嬉しかった......。中学もこんな性格だからずっと1人で、高校では頑張ろうって思ってたんだけど緊張してウチから話せなくて......。歩さんが声をかけてくれて泣くほど嬉しかったし、ドキドキした......。多分これが一目惚れってやつだと思う......」


やばい。

かなりにやけるし、ドキドキする。

こういう純粋な気持ちを、香菜の気持ちを聞いて蕁麻疹じんましんが出ている2人にも見習って欲しいものだ。

純粋な気持ちを聞いて蕁麻疹が出るってもうそれ完全に悪サイドの人間だよね?


「正直、すごい嬉しいし、香菜の気持ちが知れて良かったと思ってるよ」


「......はぅ」


パタリと倒れる香菜。

どうやら未来と美月と同じように香菜も攻めに弱いらしい。


「ねぇ、歩くん?私たちずぅぅぅっと一生一緒だよね?」


「あぁ、一生一緒(にいさせられるん)だろうな」


あえて()の中身は言うまい。

未来は心配している様子だが、僕はこれからもずっと未来と一緒にいたいと本心で思っている。


「あゆくんは私から逃げませんよね?」


「逃げ(られ)るわけないだろ」


......()の中身は、以下同文。

美月は今まで仲良くしてきた幼馴染みだから今更逃げて美月がいない生活になるなんて考えられない。


「要するに僕の人生は未来と美月がいなきゃダメってことだな」


「もうっ!ちゅきちゅきちゅきちゅきちゅきちゅきちゅきちゅきちゅきちゅきちゅきちゅき♡」


「愛してまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁす!!!!!!」


自己紹介がカオスになってきている!!!

関は僕たちに興味無さそうに髪をいじってるし。

3人は倒れているし、なんだこれ?


「ところでさぁ......私と歩くんの人生に何でモブが勝手に入ってきてんの?」


ムクリとゾンビのように起き上がるなり毒を吐く未来ゾンビ。


「私とあゆくんの東京(イチャ)ラブストーリーに汚物はいりませんね」


同じく起き上がる美月ゾンビ。

さも自分たちが東京にいると思わせる口ぶりだが、いやここ東京じゃないよ?

福井県っていう都会とはかけ離れたところだからね?

全く関係ない上に、結構遠いよ?


「......を狙うゴミは排除する......」


香菜ゾンビよ!

いつの間に歩様にランクアップしてるの!?

あぁ、そういや王子様とか言ってたもんな......。

もしかしたら結構夢見がちな子なのかもしれない。

じりじり......と、未来は電ノコ、美月は中華包丁、香菜は大きな裁ち鋏(それなんてキ〇ラキル?)を持って睨み合う。

キィィィィィィン!!!

と金属がぶつかり合う甲高い音が教室に響き渡る。

そうだそんな時こそ先生......!


「カチャカチャカチャ...ッターン!」


めちゃくちゃ集中して仕事してらっしゃる!!!

僕が先生がこちらに気づくのを期待していると、3人はそれぞれの武器を構えつつ、ギリっと歯を食いしばる。


「「「ちっ、DEA〇HNOTEがあれば......!!!」」」


え、何?

この3人は新世界の神でも目指してんの?


「とりあえず落ち着け!今は一応授業中だぞ?」


至極まともなことを言って3人のバトルを中断させる。


「じゃあ歩くんの歯ブラシでも舐めて待ってよーっと!」


最近僕の家の歯ブラシの毛先が広がらないから歯ブラシの使い方うまくなったなぁ、って思ってたけど全部こいつが回収してたのか。


「あゆくんのパンツ......スンスンスンスン!!!」


あっと、それ昨日洗濯に出したやつじゃね?

てことは今物干しに干してあるのはもう新しいのになっているというのか。


「......ウチ、何も無いから歩様にお胸触らせてあげるね......?」


「え?なんだ......ふよぉわぁ」


香菜に手を掴まれ、大きな胸に導かれる。

反射的に変な声が出てしまう。

何だこの弾力感は......!?

制服の上からでも分かるくらいの柔らかさと弾力のある『香菜っぱい』は、ずっと揉んでいたくなるほどの逸品だった。

ごちです。


「......早くお腹の子にミルクあげたいな......」


「事後じゃねぇか!!!」


もう一方の手でお腹を愛しそうにでる香菜。

ちなみにお腹は全く出ていないから身篭みごもってすらない。


「は、ははは、冗談きついぜ!」


「......卒業までには産む予定......」


馬鹿な......!?

こいつ、本気の目をしている!?


「......今からでも子作りする......?」


「ねぇ、そこの根暗ボッチ?調子乗らないでよ?」


「あゆくんからさっさと離れましょうね?隠れ変態女!」


「......邪魔しないでよ、きもいヤンデレ2人組さん......?」


多分、香菜もヤンデレ属性入ってると思うよ?

ノーマルな人はいくら好きでも人の髪の毛を食べないんだよ?

そうこうしている内にまた戦闘が始まった。

僕これに巻き込まれていつか殺されないよね?

結構ビクビクしている僕だった。

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