第2話 アーマー装着しました

「なぁ、お前らくっつきすぎだって」


「えぇ、別にくっつきすぎじゃないよ〜、愛してるよ歩くん♡」


「そうですよ、男女の程よい距離です。愛してますあゆくん♡」


読者諸君!こんな会話はラブコメで嫌という程聞いただろう!

朝の登校時、主人公を挟むようにヒロインが甘々なセリフを言うであろうこの場面!

しかし僕は言いたい......


「未来は抱っこ、美月はおんぶで、お互い俺にキスマーク付けてるこの状況のどこがくっつきすぎじゃないと?」


これでくっつきすぎじゃないとなると、この2人で言うくっつきすぎは完全に一体化ってこと?

ドラゴン○○○のセ○みたいな事か......。

ラブコメの王道展開を完全に無視したこいつらはセオリーの更に上を行っていた。


「ちゅ、んぅ......でも歩くん、アーマー着てるみたいで強そうだよ?歩くん大好き♡」


未来アーマー(前面部分)が何かを言っている。


「未来と美月単体の方が僕より強いだろ」


「んちゅ、はぁ......でも私はあゆくん相手だったら絶対に負けます。私が強いのはあゆくんがいるおかげなのです!あゆくん好き好き♡」


美月アーマー(後背部分)が俺をフォローする。

まぁ本当のことなのかもしれないが。


「なぁ、その語尾に僕への愛の言葉をささやくのって流行ってるの?」


「そうだよぉ、歩くんも私の事好き?」


抱っこされながら上目遣いの未来。

普通こういうセリフはラブコメで結ばれたカップルが愛を確かめ合う時に使うもんだぞ......。


「あーはいはい、好きだよ」


「私のことは好きですか?」


と、背中から僕の顔を覗き込んでくる美月も同じことを聞いてくる。


「ホイホイ、好き好き」


「「勝った!!!」」


どちらも同じ返事だったと思うのだが、捉え方が違ったのだろうか。

そもそも、こいつらは何を争ってるんだ?


「歩くんは私に結婚しようと、2人の赤ちゃんが欲しいと!そう言ったんだよ?」


「いいや、あゆくんは私とずっと老後まで一緒にいたいとそう言いました!」


「はっはっは!2人とも帰りに補聴器買っとく???」


もはや俺の言葉はこいつらには届かないんだろう。




――――――――――――


そんなこんなで学校についたわけだが、校門のチェック通れるのか?

いつも校門で厳しいチェックを行っているのは、怖いと噂の体育教師、小島。

赤ジャージがトレードマークのザ・体育教師だ。

こんな珍妙な格好をしたまま校門を通れるとは思えないし、他の生徒の衆目しゅうもくさらされ、

「あっ!あいつだぜ、噂のアーマー着たやつ!プッ」

「まじかよ!アイア○マン!サインください!ってお願いしようかな?プッ」

とか言われるんだろうなぁ......。

そんなことを考えていると案の定小島に目をつけられた。

いや、つけられない訳がない。


「おい!鏑木!お前はアーマーをつけてここを通れると思ったのか!?」


なんでアーマーがこいつらの中で浸透してんだよ!!!


「聞いて下さい先生!こいつら人間なんですよ!」


「な、なんだ......と......!?」


いや、ノリいいな。


「歩くんとの時間を邪魔したら〇します。おはようございます」


「私とあゆくんを止めるんだったらここであなたの首を切り落とします。おはようございます」


「先生!こいつらに悪気はないんだ!!!」


先生に向かって一切の迷いもなく言い切れるこいつらは普通にすごいと思う。

でも先生の方を向かずに顔をうずめたままなのはどうかと思う。


「......お前も苦労してるんだな、なんか無性にお前のこと応援したくなった......。通ってよし」


哀れみの目を向けてくる先生に感動を覚えてしまう。

この、作者が頭悪いラブコメの世界にまともな人っているんだぁ......。

まぁ、先生はあれだったけど、どうせクラスの連中は羨ましいとか言うに決まってる!


「......先生!」


「鏑木......!」


先生と熱い視線を送り合う。

こういう人になりたい!


「BLはダメだからね?歩くん?」


「私だけを見てればいいんです、あゆくん♡」


こういう人にはなりたくない!


「わぁい!帰りたい!!!」


「先生、目から涙が出てきたよ」


頭の中には『転校』の2文字が浮かんでいた。




――――――――――――


「ところで美月も同じクラスだったのか?」


教室の前に着いたが、うなじの匂いを嗅ぎ続ける美月が離れなかったので問いかける。


「そうですね。校長を脅しt......運命ですね♡」


この2人と一緒で僕も耳が悪くなったみたいだ!


「私たちの方こそ運命で結ばれてるからこそ自然に同じクラスになったんだよ?歩くんとの運命なんて無いんじゃない?」


未来が僕をぺろぺろしながらドヤ顔する。

イジリー〇田よりも高速でぺろぺろされる。

なんか朝から体がベタベタなんですけど?


「自分から動いてない時点で本当にあゆくんのこと好きなんですかぁ???」


美月の言葉を聞き、未来は僕をめるのをやめる。


「好きなんて生易しい言葉では言い表せないんだよ。私は歩くんを愛してる!歩くんのためならどんな犯罪だって犯すし、〇ねって言われたらすぐさま首を切れる!」


「愛されてて嬉しいけど、僕は未来にそんな酷いことは言わないよ!?」


「歩くん......。よし、婚姻届を取りに行こう!」


「落ち着け!僕達まだ結婚できる歳じゃないよ!」


「ノリで入籍してみたらええやん!!!

......なんでそこのアホ毛チビ女はすまし顔してるの?あぁ、そうか、私たちのラブラブっぷりが羨ましいんだぁ?」


「私とあゆくんはそんなやり取り何百回とやってますからねぇ、今更ですよ?ねぇ、私のだんな様?」


そのセリフを皮切りに、僕から降りた2人は電動ノコギリ、包丁を取り出し、戦闘を始める。

毎度思うけど、身体よりでかい武器ってどうやって隠し持ってるんだろう?


「あなたが〇ねば私と歩くんは!」


「私とあゆくんのために〇んで下さい!」


時折そんな声が聞こえるが、そろそろホームルームが始まるし、廊下なので周りの人たちにも危害が及ぶかもしれない。


「両方とも可愛いからどっちと結婚してもいい奥さんになりそうだよな」


「「ブシャー!!!!!!」」


両者、鼻血を出して倒れる。

あぁ、体が軽い!

さてと、教室に入って授業の準備でもしますか!

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