完全なる均衡㊸
チェンは不必要なほどの飛沫を上げ声を荒らげる。
「だからね、私はその気持ちには応えられないって言ったでしょう!! だから、恥を忍んでみんなに私の胸の内を公言したのよ! あなたって人は本当に厄介な男ね!!」
「なにをう!!!」
チェカは、彼が普段は優秀な人物であることは理解していた。これこの通りこの追い詰められた状態でも、何十体もの凶獣にとどめを刺すことが出来るし、これだけ動いても息一つ上げていないのは彼の肉体的ポテンシャルが高いことの証左である。
だが、この男は精神が極めて未熟だった。感性が研ぎ澄まされていなかった。
彼女は、師と仰ぐ羽間正太郎がそれを理解した上で、
「なあチェカ。チェンのことは君が奴を盛り立ててやってくれ。アイツは戦力外にしておくには勿体ねえ男だ。だがよ……」
「ええ、分かっていますハザマ教官。教官が仰るように、現状で実戦に出られて、私の技術と相性が良いのはチェン・リーだけです。ですが、名目上は彼がリーダーということにしておいて頂けませんか?」
「なんだって!? う、ううむ……君がそれでいいなら俺ァ構わねえがよ。でも、それでやり難くはねえか?」
「いいえ、私は彼のようなタイプを扱うのには、その方が効果的だと判断します」
「なるほど……。じゃあ、それで行ってみるか。だがよ、それでも無理があるようだったら、いつでもこの俺に言ってくれ。そん時ァ、この俺が何とかすっからよ」
「ありがとうございます、ハザマ教官」
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