完全なる均衡③
「なんだって? そいつァ面白れえ話だな」
正太郎は、不敵に口角を上げた。
「確かに僕もお父様から聞いたよ。人工知能神〝ダーナフロイズン〟なんて存在しなかったって。でもね、僕はあの時本当に見たんだよ。ダーナフロイズンが、僕にマリダの通信回路を通してそう語り掛けて来たんだ」
「ふうん、なるほどね。てえことは、お前はダーナフロイズンの言葉をマリダの回路を通して聞いたってわけだな?」
「うん」
「なるへそ。それで納得がいったぜ。確かにお前の親父さんが言った通り、ダーナフロイズンなんてもんは無かったのかもしれねえ。けどよ、それに代わるもんは存在したってわけだ」
「え、まさか……!?」
「ああ、そのまさかだよ。そして、そのまさかの種は、たった一つだとは限らねえってこった」
正太郎は、以前にも同じようなケースに出くわしたことがある。あの大型人工知能〝グリゴリ〟が、ミックスたる人々の補助脳に分散してデータ寄生し、そこで生き長らえたのだ。
もし、そのように同様となる技術が前々から存在していたのなら、かのアンドロイドなどに分散して共用ネットワークを築いていてもおかしくはない。
「じゃ、じゃあ正太郎さん! マリダも……僕のマリダもダーナフロイズンの一部だったってこと!?」
「ああ。おそらくはそうだったんだろう。無論、これは俺の推論だがな。そしてそれは、マリダに限らない話だとは思うんだが……」
「ということは、あの当時に作られたクラルイン社製のアンドロイドは、ダーナフロイズンの
「多分な。人工知能神ダーナフロイズンは存在しなかったんじゃねえ。なんらかの理由で、その存在を自ら消したのさ」
そう考えれば合点が行く。今は亡きヴェルデムンド新政府が、羽間正太郎を第一級テロリストに認定しておきながら、なぜか彼は極刑にもさらされずに自由にヴェルデムンド世界を往来していた。
それが、マリダ・ミル・クラルインという存在を中心としたクラルイン社製のアンドロイドに寄生したダーナフロイズンの意思とするならば、彼を殺さずに活かし続けていたことに納得が行く。
「マリダは、本当に正太郎さんが好きだったもんね……。傍で見てても、僕はいつもヤキモキしたもんだよ」
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