見えない扉⑨
白狐のヴィクトリア。
それは言わずと知れた、世界的な過激派組織〝フォール・アシッド・オー〟の女頭領の通り名である。
彼女が率いる〝フォール・アシッド・オー〟とは、この地球が現在の電力不足に
だが、彼女たちの組織はこの数年もの間、表立って活動を見せていなかった。
それは、かつて鳴子沢小紋がリーダーを務めていた抵抗組織〝シンクバイ・ユアセルフ〟が市民権を得ていたからである。
「さあ、ここからが私たちの腕の見せ所よ、ねえマイハニー?」
ヴィクトリアは、その陶磁器のように透き通った肌を男の胸に抱き合わせると、妖艶に笑って見せた。
「ああ、分かっているよ、ヴィヴィイ。僕だって、この機を逃す術は知らない」
互いは、いつものようにベッドの上で唇を重ね合わせると、まるでそれが合言葉であるかのように平静を装った。
「私たちは知ったのよ。この世界は武力では何も変わらないことを」
「そうだ。武力は破壊と憎しみを生む要因だ。そうだろ、ヴィヴィイ?」
「そうね。それは、あなたが五年前の私に言ってくれた言葉。それがもとで、私は変われた。そして、あなたの妹さんのように、武力で抵抗することを拒むようになった。ねえ、そうでしょ? マイハニー、鳴子沢春馬?」
ヴィクトリアは、一人の女として鳴子沢春馬に向き合っていた。
そして、鳴子沢春馬も一人の男として真剣に向き合い、彼女を説得した。
鳴子沢春馬とは無論、鳴子沢大膳の第三子であり、鳴子沢小紋の実の兄である。
彼は、かの過激派として君臨していた〝フォール・アシッド・オー〟の有り様を彼なりの考えで白狐のヴィクトリアに落とし込み、今や彼女を裏で操る
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます