全世界接近戦⑬
島崎宗孝は、娘の美菜子を思い出すたびに、過去の因縁を感じざるを得なかった。
かのゲッスンの谷第四守備隊の壊滅があったあの日、司令官の島崎に伝えられたのは、
「司令……。敵が凶獣に対して使用したのは、TCDD系の化学薬品である〝ホワイトグレープ剤〟であることが判明しました」
「ホワイトグレープ剤だと?」
「はい。ホワイトグレープ剤とは、当初このヴェルデムンド世界の寄留地を築くために用いられた農薬の一種です。この世界の巨大で強力な植物を一気に枯らすために作られた劇薬です」
人類が、この巨大な植物が
人間のような、肉体を持つ動物を捕食する肉食系植物の脅威は当然のことではあるが、その行く先を拒む巨大な木々や生い茂る草花の繁殖力は、地球の植物と比較できるものではない。
平地を整備するために伐採した植物らは、ようやく地ならしをして圧を掛けたと同時に電信柱ほどの〝芽〟が一日も経たずににょきにょきと伸びる。
そんな驚異的な繁殖力を誇る植物に対し、人間らがとった行動が、
「その当時に開発されたのが、今回使用された〝ホワイトグレープ剤〟です。ホワイトグレープ剤の名前の由来は分かりませんが、あの劇薬が我々人類のこの世界の発展に貢献したのは、紛れもない事実なのです。しかし……」
この薬剤の存在は知る人ぞ知るものであり、一般的には公表されていない。
なにより、人道的な観点からも、これからの自然科学的な観点からも、この劇薬が及ぼす影響を、ここで封鎖しなければならなかったのだ。
「そ、そんな物を……。一体、どこのどいつが?」
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