災厄の降臨⑭
二人は必死だった。まだ、息の合った連携すらままならぬこの時に、いきなり正体不明の刺客に狙われたのだ。
シグレバナが、自らの腕の切られた跡を見るなり、
「なんという凄まじい切れ味でしょう。もし、生身の身体でこれをまともに受けてしまえば……」
間違いなく死に追いやらる。しかも、自分が切られたことを自覚せぬままに。
「うわあ……」
小紋は、彼女の切られ跡を見てゾッとした。まだ、デュバラ・デフーが敵であった頃に見せつけられたチャクラムにも勝るとも劣らぬ威力である。
そんな時――、
「きゃあ……!!」
足元からただならぬ悲鳴が聞こえてきた。その声は、間違いなくカレンバナのものである。
「大丈夫ですか、カレンバナ!?」
シグレバナは、颯爽と小紋を左腕に抱きかかえると、すぐさま小枝を蹴り、幹を蹴り、もう一度別の巨木の枝葉にちょんとつま先を合わせながら一回転して地上へと降り立った。
「鳴子沢さま、失礼」
彼女はそう言うと、小紋の身体を巨木の根元に預け、一瞬の隙も見せずにカレンバナの声のする方へと駆けて行った。
小紋は、その場にキョトンと立ち尽くした。なにせ、元87部隊の彼女たちの身のこなしと言い、対応と言い、尋常ならざるものがある。きっとこれが並の人間であれば、今ここで何が起きているのかすら認識出来ないだろう。
考えつつも、小紋は首を横に振った。こんな場所で悠長に呆けている場合ではない。間違いなく自分たちは攻撃を受けている。それが証拠に、シグレバナの右腕は、二の腕の半ば辺りからすっぱりと切断されたのだ。
「何が何だか、まだ状況はつかめていないけど……」
小紋は、腰ベルトの両脇から電磁トンファーを引き抜いた。これは、小柄で非力な彼女にとって生命線のようなものだ。攻防一体にして、一気に間合いを詰めることが出来るからである。
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