災厄の降臨⑮
小紋は、耳を澄ませた。現時点で、一体どのような状況になっているのかすら把握出来ていない。
足音は二つあった。かなり静かだが、その足取りは草むらを矢で射抜いたように疾走している。
(これは多分、カレンバナさんとシグレバナさんのもの……。さっき、シグレバナさんに抱えられて下に降りたときの息遣いとおんなじだもの。だけど、二人はだれに追いかけられているの……?)
それは無意識に近かった。彼女たちは敵を追いに行ったのではない。なぜか、誰かに追われていることが分かったのだ。
(なぜか足音がしない……。なのに、あの二人よりも速い。えっ!? まさか、これって……!?)
小紋は、二人の足音がする方へと駆けだした。そしてもう一度、電磁トンファーのグリップを握りしめ直すと、
「この感じ、この感じだよ……。このピリピリとした生きるか死ぬかの独特の空気……。この正体は……間違いなくヴェロン!!」
小紋の脳裏に、一瞬にしてあのヴェルデムンド世界で羽間正太郎と特訓を重ねた日々の光景がよみがえった。
「おい小紋。お前が、どーしても俺の弟子になりてえって言うんなら、それは構わねえ。だがな、一つだけ条件がある」
小紋は、ヴェルデムンド特有の巨木の枝に腰かける正太郎をあんぐりと見上げてながら、
「条件? 僕を羽間さんのお弟子にしてくれる条件ってなあに? 僕なら、お料理もお掃除も、お洗濯だって一通り何でも出来ちゃうよ」
小紋の屈託のない声が、まだ冬支度も済まない木々の間に木霊する。
「ばーか。んなもん、俺にだって一通り出来らあ。これはこの俺の弟子になる条件なんだからな。大昔のそんじょそこいらの嫁入りの条件とはちと違うんだぜ?」
「ふ、ふうん、そうなんだ……」
「何だ? なにを
「ううん、何でもない。で? その弟子入りの条件を聞かせて?」
「ああ。それはな、ミサイルだの鉄砲だのクロスボウだの、そういった飛び道具なんかは無しで、凶獣を難なく倒すことが出来るようになることが唯一の条件だ」
「ええっ!? 射出系の武器を使用しないで、あの凶獣を!? 凶獣って、あの凶獣ヴェロンだよね!? あんなとんでもないものを、飛び道具もなしで、一体どうやって倒すっていうの……!?」
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