第二十二章【災厄の降臨】
災厄の降臨①
鳴子沢小紋、カレンバナ、シグレバナの三名による偵察隊が、かの寄留地を出立してから早二時間が経過した。
しかし、
「山向こうの火が、僕たちの寄留地からは、あんなに近くに見えていたはずなのになあ。こうやって自分の足で歩いてみると、随分遠いもんなんだね……」
小紋は額に汗を溜めこみながら、カレンバナ、シグレバナの両名に話しかける。
すると、この暗闇の中でも彼女らは、小紋の表情を暗視モードで捉えているためか、
「ええ、確かに。いかに優れた才能をお持ちである鳴子沢さまでも、この偵察任務は偵察は至難の業です。なにしろ鳴子沢さまは、その全てが生身の身体なので御座いますからね」
と、カレンバナ。
そして、
「カレンバナの言う通りです。そろそろ休憩を取られた方がよろしいかと」
と、シグレバナが声をそろえる。
元87部隊の彼女らの特殊技能さえあれば、まるで密林を自由に飛び回るテナガザルのごとく、木々の枝伝いに渡り歩くことさえ出来る。
しかし、これらの特殊技能は、多大な電力を消耗する。万が一にでも、不測の事態に陥った時のために、ここでそれを使用するわけにはいかないのだ。
「ごめんね、カレンバナさん、シグレバナさん。僕が不甲斐ないばっかりに、二人に迷惑を賭けちゃって」
「そんなことはございません、鳴子沢さま。あなたは、何も悪くはありません。ねえ、シグレバナ?」
「ええ、カレンバナの言う通りですよ。あなたはそうおっしゃいますけど、これが普通のお方なら、もうとうの一時間も前に音を上げてしまっているところです。なにせ、このような道なき道を草を掻き分けながら進まれているのですからね」
「みどもとて、予備バッテリーさえ十分であれば、このような山岳越えなど半日もあれば走破出来るところでしたが……」
「今ではそれも、かなわぬ状況で御座います」
「で、でも、それは、カレンバナさんとシグレバナさんが、僕の前と後ろに居てくれるから、僕はとても安心して前に進める……」
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