スミルノフの野望㉝


 デュバラの言う悪夢の光景とは、彼らの一種異様なその姿にあった。

 彼らは、デュバラが言うように、一見してまるで背中から羽根の生えたどす黒い出で立ちの悪魔のように見える。しかし、その実は肉体の八割以上を機械に換装させた異形体そのものだった。

 しかも、その面々には、これ見よがしに体格の小さな者も少なくない。無論それらは、この戦いに繰り出された年端も行かぬ少年少女たちの変わり果てた姿である。

「くうっ……!! これにどういう意図が含まれているのか知れたものではないが、あのような女子供までも形を変えて戦闘に巻き込むのか!? なんと暴虐な……」

 デュバラの予想は裏切られなかった。

 これは、彼が数年前に体験した第十五寄留ブラフマデージャの崩壊のセオリーの再現である。

 そして、この再現自体こそが、何者かに意図的に仕掛けられた人類の急進化状態なのである。

「あのウィルスには、感情がダイレクトに遺伝子に干渉するように出来ているようだ。しかし、感情の抑制コントロールが利かぬのでは……」

 雨あられに降り注ぐ超振動長槍シャルア・パイクを、いとも簡単に跳ね返す急進化した〝甲殻急進化人類ラディカリエンス〟らは、もうそれ自体が〝成人の赤子〟と呼ぶにはかけ離れた存在だった。

 そして、禁断の超振動長槍シャルア・パイクをいとも容易に跳ね返された〝塀の中の面々〟も、人類と呼ぶには、その定義からかなり逸脱していた。

 これはまさに、進化した別人類同士の飽くなき戦い。最終戦争の序曲である。

 

 ※※※

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