スミルノフの野望㉘


 ※※※


 

「これで予定通り、フェイズ1が決行されましたな。ともなれば、我々はフェイズ2へと移行出来ます。そうではありませんか、我が親愛なる友、ベクター殿」

 スミルノフの画面の先には、神妙な面持ちのベクター・オルソニック最高顧問の姿があった。

「ああ、スミルノフ君。こちら側でも、その件は確認済みだ。我が社は、親愛なる友の君の言う通りに、今後のタスクに必要な要件を満たして行くつもりだ」

「ええ、私は大変感謝しておりますよ。ご存じの通り、この計画は世界をより良いものに変えて行くための道標に過ぎません。よって我々は、こうして心を鬼にして、人間に毒なるものを撒き散らして行かねばならんのです。毒は人を蝕みます。がしかし、それを過ぎれば毒は人をそれまでより強靭なものにします。単に私は、それを望むまでなのです」

「深淵なる祝福を人類に」

「親愛なる人類の未来に幸多かれ」

 言って両者は通信を切った。

 何千年と変わらぬやり取りを繰り返すのが人間の歴史である。すでにスミルノフは、人間と言う生き物に絶望を感じ取っていたのだ。

「私は、私という存在をないがしろにして来た人類を軽蔑している。そうだ、人間とはとても愚かで、とても幼稚な生き物だ。そう、どんなに時を経ても稚拙な存在だからこそ、私の予測の裏を行こうとする。だから、どんなに科学が進化の一途を辿っていたとしても、人間自身は進化を迎えん。だからなのだ。だからこそ、私はこの人類自体に変革をもたらせられん!! ならば、この私が、清浄なるこの手で、この愚かな民衆どもを変えてやらねばならんのだ!!」

 

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