スミルノフの野望⑮


 もう、三次元ネットワークを使用しても、何も情報は更新されていなかった。全ては、各自治区に敷設された核融合情報発信装置を介さなければならないのだ。

「やっとの思いでここまで来られたのに、これじゃまたクリスさんの居所すら分からなくなっちゃったね」

 小紋は、更新がひと月前で滞ったままのニュースサイトを何度もスワイプする。虚しく過去のデータだけが閲覧可能なのである。

「うむ。これで、私が以前につかんだ情報のみでは不十分であるということが分かった。この国の地形は変わらずとも、内面の地形はより複雑になって来ている。そうであろう、オツ殿?」

「ウン。ボクに備え付けられた端末ハ、この国の仕様ではナイケレド、更新がカカラナイところを見ると、行き先までの通路は確実とはイエナイネ」

 関西エリアに設えられた〝関所〟を潜り抜けられたのは、まだ自治区と自治区の間に抜け道が存在するからである。あの核融合情報装置の敷設がこれ以上進み、碁盤の目のように壁が出来てしまっては、先へ進むどころかもう引き返すことすら出来なくなってしまう。

「そっか、こうなると、何とかして近々の情報が入ったデータ端末が必要になるね」

「ううむ、そうだな……」

 デュバラは、言われて考え込んだ。そして、しばらく黙り込んだのちに、

「こうしてみてはどうか、小紋殿?」

「なあに? 何か策があるの、デュバラさん?」

「うむ。彼ら自治区の猛者どもをおびき寄せてみるのはどうかと思うのだ」

「おびき寄せる?」

「ああ。我々部外者は、特殊なIDを持っていぬために、当然塀の中には入れん。だから、この中の人々をおびき寄せて、それらの者から端末を奪うというわけだ」

「それって、中の人から端末を盗むってこと?」

「うむ。それ以外に方法はあるまい」


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