驚天動地の呪い㊶


「先ほどの報道番組でも言っておったが、都合の悪いものだけが全く見えなくなってしまう病は、きっと普段から都合の悪い真実ばかりを見過ぎてしまった人々の罹る病なのだと思う」

「そうだよね。だって、元から都合の悪い真実が見えていない人なら、病気になる必要がないもんね」

「ああ、計算機が狂ったのだ。そなたの師匠である羽間正太郎は、現実を無視する計略はなんの意味もないと自ら最前線へと赴き、時には実行部隊を指揮したと語られている。そんな男だからこそ、彼は今でも信望が厚い」

「えへへ、羽間さんを褒められると、なんだか僕も照れちゃうな」

「照れる必要などない。これは事実を言ったまでだ。そなたがどう感じようと、これが真実というわけだ。つまり、事実だけは変えられん証拠だ」

「そっか、なるほど。つまり、今デュバラさんが言いたかったことは、事実をどう捉えるかは、それを見て感じた人次第だってことなんだね?」

「その通りだ。言うなれば、今回のウィルスは、ある特殊な感性を持っているということになる」

「えっ!? だって、ウィルスって、単なる細胞みたいなもんなんでしょ? 細菌なんかと違って、生物とは違うんでしょ?」

「うむ。どうやら生物学的にはそのように分類されているようだが、今回に限っては違うようだ。もしかすると、誰かがそのウィルスとやらに何らかの細工を仕込んだのかもしれん」

「ま、まさか、そんな……」


 ※※※


「ウィルスの効果は、思った以上に覿面てきめんだったようじゃな、墓荒らしよ」

 怒り心頭の面持ちでスミルノフをにらみつける桐野博士である。

「相対性ウィルス。なるほど、博士の仰ったその言葉、たった今納得が出来ましたよ。さすがは世に謳われる天才工学者だ。どうせなら、その功績にちなんで〝キリノウィルス〟とでも世界に触れ回りましょうか?」

「黙れ、この減らず口が!! 貴様、この悪魔のウィルスの効果におののいて、このわしに全ての罪を擦り付ける魂胆か!? この見下げた奴め!!」

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