驚天動地の呪い㊱


 小紋もデュバラも振り返った。

 振り返ったその先には、血みどろに染まった竜子の姿があった。

「りゅ、竜子さん! その体!?」

 慌てて小紋が駆け寄ろうとするが、

「来ないで、小紋さん!! 近寄っちゃだめ!!」

 竜子は必至で拒んだ。拒んだ拍子に、竜子の肘の関節がぐしゃりと折れ曲がり、裂けた皮膚からは鮮血が湯水のごとく溢れ出す。

「な、なぜ!? なぜこんなことに!? 竜子さん!?」

「死ねないのよ!! わたくしたちは死ねないのよ!! 死にたくても死にたくても、どうあったって死にきれないのよ!!」


 朝日が昇り切った頃、ホテル跡の正面にあった骸の山は失せていた。あれだけアスファルトを血みどろに染めた光景も、今は過ぎ去った悪夢を回想するがごとく記憶の彼方に消え去っている。

「これで分かったでしょう? わたくしたちのことを……」

 小紋は、竜子と道路わきにある彩られていない花壇に腰かけて肩を並べた。

「ううん、全然わかりません。確かに死ねない身体なのは分かりましたけど」

「そう……そうよね。分かるわけがないわよね。死ねない身体になってしまったというだけでも、非現実的なのに」

「そういうわけじゃあ……」

 小紋が返答に困っていると、

「あのね。きっとあなたは、逆にわたくしに聞きたいことがあるのではなくって? どうして死にたがっているのかっていうことを」

 竜子は率直だった。図星である。小紋が気になっているのは、ずばりその事である。

「え、ええまあ……」

「それはそうよね。普通に考えたら、どうあっても死なない身体を持ったら、もうけもんぐらい思うはずですもの。でもね、小紋さん。わたくしたちは、死なないのではなく、死ねない身体になってしまったのよ」

「えっ!? それはどういう……」

「だから、それは言葉通りよ。わたくしも、ここに居るみなさんも、死なない身体を持ったことに何の感謝もしていない。何の幸せも感じていない。何の得もしていない。むしろ、この境遇を憎んでさえいるのよ」

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