驚天動地の呪い㉛


「うむ、それはだな。私には少なくとも、ここに居る竜子殿を始めとした全員に〝死の影〟が感じ取れるということだ」

 小紋は、デュバラが言葉を終えるのと同時に、おおよその納得がいった。彼女も、同様に思う節があったからだ。

「そうなんだね。やっぱりデュバラさんもそんな風に感じていたんだ」

「というと、そなたも同じように?」

「うん。だってさ、色々とおかしいよね。竜子さんたちは、いきなり僕たちの目の前に飛び込んできて〝死ねない〟って証明を見せて来たんだよ? それなのに、竜子さんたちには切っても切れない悲壮みたいなものが見え隠れするんだもの。色々と……」

 小紋が気になっていたのは、竜子たちのこの事業に対しての有り様が不思議でならなかったからである。

 このホテル跡の宿舎事業は、採算度返しの言わば丸っきりの慈善事業である。どんなにという身体を手に入れたとしても、それに伴う痛みや空腹と言った苦しみからは逃れられないという。

 それなのに、自らの貯蓄を削り、大枚をはたいて先行きのない慈善事業への投資をする行為というのは、どこかに矛盾を抱えている証左でもあるのだ。

「なあ、小紋殿。何が目的だと思う? 彼女らの」

 小紋はすかさずかぶりを振って、

「全然分からないよ。だって、人間が死ねないなんて状態があること自体が、この自然界で出鱈目なわけでしょう? それなのに、それ以上竜子さんたちの気持ちや目的を計り知ることなんて出来ないよ……」

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