驚天動地の呪い⑳
「うむ、そうか。ここもか……。これは大誤算であったな」
「きっと、あの浮遊戦艦が、たくさんの人を置き去りにして行っちゃったせいだよ。こうなると世界中は大混乱だね」
「ああ。なにせ、世界中の物流のほとんどがストップしてしまったのだからな。あの置き去りにされてしまった人々が、夜な夜な無差別に母乳を求めに徘徊しているのだ。よもやこの状況も仕方がないということか……」
彼らの誤算と言えば、それだけではない。
物流の混乱によって生じる物価の高騰もそうだが、彼ら自身もそういった事情によって、この道中の間に何度も足止めを食らったり、回り道をさせられたりしてしまっている。
それによって、彼らは当初の計画よりもはるかに燃料を多く使用してしまっているのだ。
「これじゃあ、いつになっても目的地まで辿り着かないよう」
「うむ。かと言って、このオツ殿をここで置いて行くわけには行かん。それに、もしここでオツ殿を置き去りにして我々だけで先を急いだとしても、どのみち精神を赤子に戻されてしまった人々の妨害を受けてしまうことは目に見えている。それならば、身の安全を確保するためにも、我々はオツ殿と共に行動する方が得策と言える」
そこで小紋は、フウッとため息を吐き、
「ああ良かった」
「ほう、なにがどう良かったというのだ、小紋殿?」
「そりゃ何がってさ。デュバラさんたら急にそんなこと言うから、もしかしたらオツ君を置いて先に進もうなんて言い出すんじゃないかって、ハラハラしちゃってさ」
「何を言うのだ、小紋殿。私はそんな卑劣なことは決して口にせんぞ。なにしろ、このオツ殿には寝床を確保してくれているという恩義があるからな。それとも小紋殿の目には、私がそんな非人道的な人間に映って見えるとでもいうのか?」
「あはは。ごめんね、デュバラさん。だって、デュバラさんって元々が殺し屋さんでしょ? そうなると殺し屋さんって職業のイメージで言うと、目的のためなら手段を選ばない感じがあるじゃない?」
「うぐう……。そこを突かれてしまうと、私は何も言い返せん。なにせ私は、生まれてもとより出自が暗殺者の身。これまでの愚行を鑑みれば、人の道を語れるほど良き行いは取って来ておらぬ。痛いところを突く……」
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