驚天動地の呪い⑧
「そ、そんな。まさか……」
小紋は振り向きざま、絶望の淵に立たされた。よもや
だがしかし、それは彼女の絶対的な存亡の危機などではなかった。なぜなら、そこに懐かしい声を聴いたからだ。
「大丈夫か、小紋殿? 怪我などはないか?」
暗闇の中に、アルトサックスの優しい音色のような低く響き渡る落ち着いた声が問い掛けて来た。
「その声、もしかして……!? その声は、もしかしてデュバラさんなの!?」
月明かりの光源も差さず、土蔵の中は相変わらずの暗闇であった。がしかし、その見事な円形に切り出された壁の向こう側に見えて来る人影に、彼女は懐かしさと安堵を覚えた。
「その通りだ、小紋殿。私だ、デュバラ・デフーだ。すまぬ。そなたを探し出すのに少々手間取った。許してくれ」
デュバラは、心底申し訳なさそうに言葉を伝えると、
「ここは、この私が引き受ける。そなたは、この丘の向こうにあるそなたの乗って来た車両まで急ぐのだ!!」
「デュバラさん、デュバラさん!!」
小紋は涙目になって、デュバラのもとへと駆け出した。彼が小紋のもとを去って、あれから約二年以上が経つ。囚われた妻のクリスティーナの奪還が理由だったとは言え、それは小紋にとって、とても心細く寂しいことだったのだ。
「さあ早く!! さすがの私とて、これらの一群に対して容易に手を出すわけには行かん!! 彼らが元通りになる可能性が残されている限り、な!!」
デュバラは、相変わらず率直で熱意に満ち溢れていた。先に羽間正太郎に出会っていなければ、さすがの小紋でさえも、デュバラに心惹かれていた可能性も否めぬほどである。
「あ、ありがとう、デュバラさん。でも、どうしてここが……!?」
「詳しい話は後だ。私にも、そなたに話したいことは山ほどある。だから、ここは早く!!」
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