驚天動地の呪い③


 ※※※


 スミルノフが手にした悪魔の一滴の効果は絶大だった。

「まさか、こんなことになろうとは……」

 彼は、浮遊戦艦に強制的に放置されたカプセルの山を前に一人固唾を飲んだ。

 このカプセルに入れられた人々は、この二年もの間、電脳世界で〝夢〟を見せられていた。だが……。

「貴様の思惑とは、少し……いや、かなり違ってしまったようじゃな」

 傍らで桐野博士が話し掛ける。

「こうなると、もはや浮遊戦艦側も用済みというわけですな……。これが、人類の末路かと」

「己自身でやっておいて、何を言っておる!! 貴様が仕出かしたことは、テロリズムなどと言う生易しい言葉では済まされんぞ!!」

 博士は、カプセルの中身を指さしていきり立った。

 そのカプセルの中の人々は、一様によだれを垂らしたまま糞尿を垂れ流し、恍惚の表情で天を仰いで宙を見つめていた。

「彼らは幼児化したのじゃ。貴様の撒いた悪魔のウィルスに感染してな。人類史上、最も極めて悪質な行為じゃ」

 どうやらスミルノフ本人ですら、そう思っているようで、

「フフッ、これでは私の計画が台無しです。こんな状態では猿に戻るというより、猿以下の状態だ」

「き、貴様と言うやつは……」

 浮遊戦艦側の目的の一つに、人類のデータ採取があった。ゆえに、彼らは人類の多くを捕らえ、そこで一つの電脳世界に住まわせることで、人間と言う生き物がどのような社会形成を行うのかを観察していたのだ。

「じゃが、貴様の放ったウィルスの感染力は、地上から遠く離れた浮遊戦艦の中にまで及んでしまったのじゃな。そこで感染し、発症してしまった人々は……」

「成人の姿でありながら、思考の全てを赤子のレベルにまで落とされてしまった、というわけですな」

 

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