偽りの平穏、そして混沌㊶
※※※
「ねえ、オツ君。キミは誰にどうやって、この僕をここに連れて来いって命令されたの?」
道すがらの山間は、相変わらずのでこぼこ道だった。
小紋は、かつてここに沢山の人々が生活していた匂いを感じながら、人工知能に問い掛けるのであった。
「ボ、ボクは……。ナニモシリマセン。ナニモ聞いてイマセン。タダ、指定された場所カラ場所マデ、アナタを送り届ける役目を命令サレタダケデス」
この人工知能に、嘘を吐くだけの
「そうだよね。きっとそうなんだろうね」
小紋は軽く腕組みをし、納得した表情で、
「キミは利用されたんだね。キミたちみたいな無垢な坊やたちの特性を分かった上で……」
「ボウヤ……デスカ? ボク、ボウヤだったんだ」
まるで変声期前の少年のような、まるで二次性徴を迎える前の少女のような可愛らしい声で、人工知能は衝撃を受けていた。
小紋は、こういった可愛らしさを売りにしながらも、それ以上を望まないフューザー・アルケミスト社の考え方に、ずっと違和感を覚えていた。
(そうなんだよね。僕らが住んでいたヴェルデムンド世界の人工知能は、マリダや烈太郎くんみたいに、日々の変化を望むことが前提の人工知能が当たり前だったんだ。だけど……)
だがしかし、この地球の人工知能にそれはなかった。
この事実は、さかのぼること数年前に、彼女が父の計らいによって強制送還された時から感じて来た確実な違和感なのである。
(確かにオツ君たちは、可愛らしいことは可愛らしいよ。そうなんだけど、常に子供のまま使い捨てられちゃう人工知能なんて、逆に可哀そうだよ)
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