偽りのシステム245
エスタロッサ中隊は、一機残らずアイシャが対応するポイントへと向かった。
狭い坑道であるにもかかわらず、彼女の統率によってそれらはなんの障害なくポイントの近くまで辿り着くことが出来た。
だが、
「確かにここまで来ると、エナ・リックバルトとの通信が途絶えてしまいました。これは間違いなく確信犯の所業でしょう」
エスタロッサは言いつつも、焦りを隠せなかった。長年に渡り気心知れた仲間だと思っていた上官の裏切りに、さすがの彼女でも衝撃を隠しきれない。
「フフッ、これが統率システムを利用していなければ、恐らくは……いえ、確実に私たちの中隊の全員がこちらに辿り着くことはなかったでしょう。しかし、今さらなにを弁解しても、私が浴びた返り血の跡が消えることはありません。申し訳ないのですが、あなたたちには全員地獄まで付き合ってもらいます」
彼女は、全機隊の生存シグナルを確認するや、不敵な笑みを浮かべた。
「先ほどは、本気で改心できたと思っていましたが、たった今、実はそうでないことを自覚しました。私がここに向かってきた真の理由は……」
先へ先へと進むと、そこに桜色のきらめきを放つしなやかな肢体を見つけた。アイシャが何やら激しい動きをしながら攻撃を仕掛けているように見えた。
しかし、そこには彼女に敵対するものの影は確認できなかった。
「何をやっているのです、姫? アイシャ・アルサンダール姫!?」
エスタロッサは、さも以前から彼女と知り合いであったかのように後ろから声を掛ける。
それに呼応してアイシャが振り返り、
「あ、あなたはもしかして、あの部隊の女中尉さんなのでしょうか?」
「え、あ……ああ、いかにもそうです。私はエスタロッサ・ヒューデカイン中尉です」
エスタロッサは、さもそれが当然のように機体をかしずかせる。
「けれど、ヒューデカイン中尉。貴方がここにいらしてくれたということは」
「お察しの通りです、アイシャ姫。残りの十九基の小型核は次元扉の向こう側に排除することが出来ました。軍師エナ・リックバルトの了承済みです」
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