偽りのシステム236


「そうです、それです!! そのお話です!! その時間のお話なんです!!」

 アイシャは、まるで何かに憑りつかれた様にエナに強く迫った。

「アイシャさん、落ち着いて、落ち着いて! そのアイシャさんの言う時間のお話ってどういうこと!?」

 エナは、赤子が泣くのをあやすかのように、

「それで? ねえ、時間をどうすればいいの? そこを詳しく聞かせて、ね?」

 エナもアイシャに釣られて必死だった。鬼気迫るとはこのことだ。

「そう、時間なんです。でも、時間が無いんです。今エナさんは、時間を引き延ばすことが出来れば良いとおっしゃいました。でも、そんなことは出来ない。なら、こちら側の時間を縮めてしまえば良いんです!!」

「時間を縮めるですって!? それはどうやって!?」

「それは、この十五分以内に核爆弾を集めて、この次元扉の向こう側に投げ込んでしまえばいいんです!!」

「な、何ですって!? よりにもよって無茶苦茶なこと言うわね!! で、でもね。そんなこと、アイシャさん一人じゃ無理よ。物理的に無理よ!! もし、あたしの身体を、何らかの形で実体化したとしても、とても二人掛かりでは無理!!」

「いいえ、物理的に無理なんかではありません。だって、今現在、この寄留地に居るのはわたくしたちだけではないのですから」

 言われてエナは、ハッとした。

「まさか、あの連中と手を組むというの!?」

「はい」

 アイシャは間髪入れずにうなずいた。

 エナは、少しの間だけ押し黙ると、

「そう。なら……あの女中尉との交渉は、このあたしがやるわ。アイシャさんがやってもいいのだけれど、きっとあの女中尉のことだから、アイシャさんを一目見だだけで交渉が決裂すると思う……」

 言われてアイシャは、少しだけ首を傾げ、

「それがどう意味なのかは分かりませんが、エナさんが言うのだからその通りなのだと思います。ここはエナさんにお任せします」

「分かったわ。じゃあ、これだけは約束して。交渉が決裂した時点で、あたしとアイシャさんは、ショウタロウ・ハザマの入ったカプセルを持って次元扉の向こう側に逃げ果せるってこと。そして、決して無茶なことだけはしないって。良い? それがお友達としての絶対の約束よ?」

「はい!!」


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