偽りのシステム229



 ※※※


「ようやく本心を現したようだな、エスタ坊や……」

 エスタロッサ中尉の上官であるエリケンが、第十五寄留の地下入り口にある寄留港に身を寄せて傍観する。

 決してエリケンが、エスタロッサの暴虐な世界破壊計画を知らなかったわけではない。ただ、彼自身にも迷いがあったのだ。

「この俺には、貴様のような破滅的な感情は備わっていない。ただ、俺は残りの余勢を安寧に暮らしたかっただけなのだ。しかし、それも無理のようだ。貴様の計画はシュンマッハにも筒抜けだった。許せ、エスタ坊や。この俺に与えられた使命は、第十五寄留跡地の爆破命令ではない。貴様もろともエスタロッサ中隊の抹殺なのだ……」

 エリケンは、とうの昔にシュンマッハの手足にされていた。

 シュンマッハとて、第十八特殊任務大隊の恐ろしさは心得ている。そんな彼らを手玉に取るための政治的圧力は行使済みであった。

「真に恐ろしい男よ、あのシュンマッハという成り上がりの皇帝陛下は。エスタ坊や。貴様の言う通り、俺たちは軍隊という高度なメンテナンスが必要不可欠なのだ。だからこそ、俺はシュンマッハの言いなりになる必要があったのだ。ある意味、俺たち行き過ぎたミックスの安寧を求めるには、こういった手段が必要なのだ。貴様がもっと賢い選択が出来ていれば、このようなことにはならなかったものを……」

 エリケンがつぶやくや、エリケン八個中隊のフェイズウォーカー〝イシュトール・イシュⅣ型〟が全て散開する。

 一中隊三十五機からなる八編隊が、一斉に第十五寄留跡地の南側を占領したとき、八基の小型核爆弾の起動スイッチが一斉に押された。

「この小型核の爆発まで二十分。それまでに決着がつこうがつくまいが、エスタ坊や。貴様はこの第十五寄留跡地のと共に世の塵となりて消え失せるのみだ……。さらば、わが愛しきエスタロッサ・ヒューデカイン嬢……」


 ※※※




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