偽りのシステム216
言われてファッキン上等兵は黙りこくった。そしてその時、まるで何か糸が切れたようにプツリと肉体と意思とが途切れた始めた。
そして小刻みな痙攣をおこし、彼の目の前に閃光が走り――
「こ、これは……何!?」
アイシャの思考の中のエナが突然叫んだ。「へ、変だわ。様子が変だわ、アイシャさん!! あの化け物の周囲に、妙な電波が絡みついてくる!!」
「妙な電波ですか? それはどういう……え、あっ!!」
アイシャは異様な状況を察知して、ファッキンの機体から素早く身を引いた。すると、ボロボロにへこまされたファッキンの機体の装甲が見る見る落ちて行き、そして機体から全ての装甲が剥がれ落ちると、
「ああ!! アイシャさん、気を付けて!! これは……!?」
エナがアイシャの思考の中で叫んだ。と同時に、アイシャも攻撃の手を止め、その目の前の相手の異様な姿に愕然とした。
「こ、こんな事って……!?」
なんと、アイシャの目の前に現れたのは、コードまみれの肉塊から幾本もの手足が生えた異形の生物だった。
「まさか、そんな……!? こんなものが仮にも正規軍に実戦配備されているなんて……!!」
エナが、強く顔を引きつらせて目を見開く。
「これはもう、人間なんて言えない。本物の化け物です……」
エナは、激しくうなづきながら、アイシャの言葉に同意した。
美しさや格好の良さ、そして可愛らしさなどの概念は、その生物が子孫繁栄のために植え付けられたものだという説がある。そういった概念が自然に植えつけられることによって、それを見た者は感情が高まり、その対象を守り繁栄させたいといういう欲求に駆られるという仕組みらしい。
だが、目の前の敵の姿には一切のそれが感じられなかった。逆に、見た者を嗚咽にいざない、嫌悪を誘発させるために事欠かない容姿であった。
「生物感情兵器……。あの国は、こんな物まで実践に投入させていたのね……」
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