偽りのシステム213
アイシャの中に、再びあの頃のように煮えたぎる熱いものが沸き立って来た。羽間正太郎と初めて出会ったあの夜。そして面と向かい、腹の底から心を通わせあったその行為は、二人の間に相通じる信念という揺るぎない心の二文字を芽生えさせた――。
「フィヨードル上等兵。貴方は……貴方という人は、まるで自分のことしか、か……考えていません」
痛みをこらえながらも、アイシャは必至で裂孔の向こう側に居る人影に問い掛ける。
「な、なんでごぜえますか!? この期に及んで、このあたしにお説教でごぜえますか!?」
「いいえ、わたくしは、お説教などという生ぬるいものなどは申しません。で、ですが……」
言ってアイシャは、刺された肩口をかばいながら、もう一度身体をひねり返す。その勢いで右足を強く突き出して、
「言葉が通じぬのなら、その心を貴方の体に叩き込むだけです!!」
再度、凄まじい回転蹴りがイシュトール・イシュⅣ型の横腹に突き刺さる。
「うごっふ……!!」
勢いで、ファッキンの機体は背中から押し出された。同時にコックピットカバーの裂孔から本体がむき出しになる。
しかし、それと同時に、アイシャの肩口の傷の裂け目が広がり、辺り一帯が鮮血まみれになる。
が、
「こんなものではすみません!! 貴方が他の方たちに与えた痛みは、こんなものでは済まされません!!」
アイシャはその手を止めなかった。右へ左へと鋭く凄まじい蹴りと徒手空拳の嵐に、ファッキンのイシュトール・イシュⅣ型は手も足も出ない。
「貴方は……貴方という人は身勝手です!! 思い込みも甚だしい限りです!!」
イシュトール・イシュⅣ型の装甲が、まるでボロ布を剝ぐように次々と蹴散らされてゆく。
ファッキン上等兵としても、少しでも反撃を試みたいところだが、
「な、なぜなのでごぜえます!? 避けようとしても、避けられないでごぜえます!! なぜ、なぜ……!?」
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