偽りのシステム185


 エスタロッサ指揮の七個中隊は、七基の陸上戦艦として巨木の間を疾走していた。

 しかし、一たび行く手を塞ぐ凶獣の群れに遭遇すると、

「各機全散開!! 上空からの攻撃に備えるのと同時に、上方のヴェロンに対し、プラズマシュート一斉射用意!!」

 彼女がことを念じると同時に、七基あった全長百五十メートル、全幅四十五メートルの陸上戦艦が、蜘蛛の子を散らすように細々としたフェイズウォーカーの群れとして地上に広がりを見せ、

「撃て!!」

 号令と共に、激しい回転を帯びたニードルガンが放たれた!

 プラズマシュートニードルガン。火薬の爆発などの衝撃によって放たれる実弾銃とは違い、このニードルガンは、故意的なプラズマ放電による電磁力によって激しくニードルが発射される。

 その発射圧力は、あの烈風七型に搭載されたリニアレールキャノンに遠く及ばないが、その汎用性と利便性、さらに小型武器であることから、これからの実弾武器として大いに期待されている。

 そんな試験的な武器を、全てのフェイズウォーカーの主戦武器として運用させ、それを惜しげもなく撃ち放つ第十八特殊任務大隊は、もはや人としてのていは成していなかった。

 陸上戦艦一基当たり、フェイズウォーカー〝イシュトール・イシュⅣ型〟が五十機連なっている。つまり、七基編隊の陸上戦艦であるからして、この巨木の森の表面には、三百五十のイシュトール・イシュⅣ型の機体が一斉にプラズマシュートを打ち放ったのだ。

 上空はもやは、緑色の粉塵の雨に染まっていた。およそ百体は居たであろう凶獣たちは、一瞬にして緑色したもやに姿を変えた。

 プラズマシュートの威力の根源は、その速度よりも回転力にある。

 プラズマシュート銃から放たれた激しい回転のニードルが、対象物を貫いたと同時に起きる、得も言われぬ無慈悲な破壊。何と言っても、それこそが彼女たちエスタロッサ中隊の怨念であり、血みどろの決意であった。

「こんなものではすみませんよ、羽間正太郎。あなたをこの世から消滅させなければ、私の存在価値は取り戻せません!! そう、私が別の人間として生まれ変わるために、あなたには消えてもらわねばならないのです!!」


 ※※※


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