偽りのシステム182


「わ、分かったわよ。協力すれば良いんでしょう?」

 エナは、半ば渋面を作りながらそっぽを向く。

「わあ、本当ですか!? それならば、こんなわたくしでも戦えるかもしれない」

「で、でも、あたしは見ての通り、直接の戦闘は出来ないんだからね! 直接戦うのはアイシャさんの役目なんだからね!」

「ええ、ええ、それは承知しています! これで何とか正太郎様のお力添えが出来ます!!」

 そう言ってアイシャは、正太郎が未だ眠りについているカプセルを大事に抱える。 

 それを目の当たりにしたエナは、いわゆるこれが、身の心もぞっこんというやつなのだ、と思った。何をどうしたらここまで心酔できるものか。むしろここまで清々しいと、彼女に嫉妬心を抱いていることの方が馬鹿馬鹿しくなってくる。

「いいわ、アイシャさん。あなたの望む通り、あたしがあなたのフォローに回る。でも気を付けるのよ。相手は何と言っても百戦錬磨の第十八特殊任務大隊なの。あなたのその身体がどこまで通用するかはまだ未知数だから、戦略だって簡単に立てれられない。だから、あなたの能力と相手の能力を把握するまでは、それとなく踏ん張ってもらわなければならないわ」



 ※※※


 二手に分かれたエリケンの八個中隊とエスタロッサの七個中隊は、それぞれ第十五寄留跡地の西側と東側を挟むように進軍していた。

 途中、それなりに凶獣の襲来に出遭うこともあったが、今の彼らの機動力と火力をもってすれば、それは道すがらの蚊トンボを撃ち落とすようなもの。さして問題にするような出来事ではなかった。

「よし、エスタ坊や。目標に辿り着いたら、それぞれ設定した通りに核爆弾の時限装置を起動するんだ。どうせこんな時代だ。寄留跡地の一つや二つ吹き飛んだところで、何もかわりゃしない」




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る