偽りのシステム136


 彼女らの身体には、様々な高感度センサーが組み込まれている。無論、特殊任務部隊であるがゆえに、通常のミックスよりも高性能のものが装備されている。

(まずは臭気センサー反応……。なるほど、全滅したフィレル准尉の部隊の先行した方向から、かなりのベムルの実のフェロモン反応が見受けられます。ヴェルデムンドの背骨折りは、意図的にベムルの実を使用したと言うわけですね。なんという命知らずな……)

 エスタロッサは、なぜフィレル准尉らの部隊が全滅に追いやられたのか納得せざるを得なかった。いくら特殊武装した彼らであっても、大量の凶獣ヴェロンの襲撃に遭えばそう易々と攻撃を防ぎ切れるものではない。逆に考えれば、それは仕掛けた方としても自殺行為に当たる。

(次は光学探知センサー反応……。そして微細音声反応……。さすがにこれはここでは役に立ちませんね。この深夜の森の真っ暗闇では、光学的な反応は期待できません。それに微細音声。こんな微細な音ですら、森の木々の葉のかすれる音によってかき消されてしまっています。この自然界にない異常な音のズレは、プログラムで感知出来ていますが、さすがはヴェルデムンドの背骨折り。あらかじめそういったことを想定して、所々に簡単な音ズレを作る装置を仕掛けています……)

 次に、彼女はため息をつきながらも、何気なくこれまでの経緯から一番役に立ちそうもない感覚器センサーを使用した。それは、通常時の想定で使用するマニュアル的な行動原理の一つであった。

(熱感知センサー……。この戦闘で一番信頼のおける感覚を、あの男は見事に断ち切ることで私たちを混乱の渦中におとしいれました。これだけ感知しても、未だに見つからない……)

 彼女がそう心の中でつぶやいた瞬間である。

(な、何なのです、これは……!? 光が、熱源探知された光が所々に……!?)





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