偽りのシステム137
エスタロッサは身震いした。なんと熱源探知センサーに呼応して、突如まばゆいばかりの赤や黄色、白と言った光の玉が彼女の視覚一杯に広がって来たからだ。
(い、いけない……!!)
気づいた時には遅かった。そして光体は彼女の行く手の視界を奪った。そしてさらに、一瞬の隙を生み出したのだ。
刹那、彼女の身体に凄まじい衝撃振動が起きた。かと思うと、次の瞬間ズシリと背中に重たいものが覆いかぶさって来た。
「へへっ、やっと会えたな、羽根の生えた飛び切りのカワイ子ちゃん」
耳元で、妙に場違いな甘い声を吹きつけられる。聞いたことない男の声であった。
「ま、まさか、あなた……ヴェルデムンドの背骨折り……ですか!?」
男は、彼女の飛翔の最中、一瞬の隙が生まれた瞬間にドンピシャのタイミングで彼女の背中に飛びついて来たのだ。あの熱感知センサーは隙を生みだすためのブラフだったのだ。
彼女は背中からロープのようなもので胴の部分を雁字搦めにされた。しかし、ここがヴェルデムンドアーチと呼ばれる特殊な場所である以上、旋回飛翔はやめられない。
「へえ、俺のことを知っていると? こんなカワイ子ちゃんに名が売れているのはまるで悪い気がしないね」
やはり彼女の予測した通り、この攻撃を仕掛けて来たのはヴェルデムンドの背骨折りこと、羽間正太郎であった。
「ほ、本当にあなたは一人でここにやって来たのですか……!?」
エスタロッサは聞きたかった。作戦を司るものとして。この作戦の一端を担うものとして。
「ふうん、君は生真面目なタイプの女の子なんだねえ。自分の命よりも、仕事優先てなタイプ? 残念ながら、君の今日の星回りは良くなかったみたいだねえ」
「わ、私は占いなど信じません!! 後生です、羽間正太郎。真面目に答えてください! こちらはあなたにしてやられた敗者なんです! 敗者がみっともないのを承知でうかがいますが、自分が死ぬ前に、自分たちが負けた理由を知りたいんです! そして私たちを圧倒した相手の証しがが欲しいんです!! その証しを知らぬうちには、あなたの戦術の前に散っていた仲間たちも浮かばれません!!」
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