偽りのシステム123



 だからと言って、エスタロッサ中尉らが後戻り出来るわけではなかった。中尉らは、もうまともな人間には戻れないのである。

 まして、アルティメットサイバーシステムを使用してしまった時から、中尉らの脳にはの感覚が侵食してしまっているのである。その禁断のプログラムを感じてしまった時から、獣や機械の感覚を強制的に保持してしまっているのだ。

(私たち第十八特殊任務大隊のメンバーは、全員が人工知能の補助を受けなくても、この肉体の操作を充分に引き出せるだけのプログラムを補助脳にインプットされています。だからこそ私たちは負けられない。これからの時代を拓くのは、私たち第十八特殊任務大隊……〝十八番おはこ〟のメンバーなのです!!)

 エスタロッサは、飛翔の速度を上げた。両腕を水鳥のような大翼に換装させた中尉の姿は、まるで神話の世界の人ならざる神の化身のごとき荘厳さがある。

 その後に続く中尉の部下たちは、スズメバチを模した羽虫のごとき突進力を持ち、それゆえに危険な何かさえ感じさせるほどの異様な雰囲気を放っていた。

「アルファワンより各自へ。これより険しい丘陵地帯を抜け、もっとも険しいとされるヴェルデムンドアーチに突入します。みなさんも知っての通り、ヴェルデムンドアーチは凶獣たちが無尽蔵に巣食っている超危険地帯です。ですが、私たちの力をもってすれば、あの凶獣ヴェロンも敵ではありません」

 エスタロッサ中尉が言うや、二番隊のエリエル軍曹が口を挟み、

「その通りです、中尉。聞いたかみんな、今の中尉のお言葉を。我々は完全種族になり得た。だからこそ、我々はこの任務を必ずやり遂げねばならん! それが完全種族たる我が大隊の使命なのだ!!」


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