偽りのシステム103
エリケンは一切言葉に出さなかったが、メラメラと燃え盛る闇の炎が始終心の中を支配していた。
新政府軍を通じ、ノックス・フォリーの作戦立案部から一点突破の作戦の概要が伝わって来たのは、あれから十二時間後である。
「各自、出撃メンテナンスを行うと同時に、一時間後に集中ブリーフィングを行うと通達するんだ、エスタ坊や」
「了解であります、エリケン大佐殿。これより一時間後に、本大隊は集中ブリーフィングを行うことを各人に通達します」
集中ブリーフィングとは、第十八特殊任務大隊に所属する全ての将校、兵士に対して、補助脳を通じ、大隊の共有ネットワーク上での仮想空間を使用して行う簡易説明会のことである。彼らは、一様に肉体の半分程度を機械に換装した半サイボーグ人間である。そんな彼らは、物理的な会議室を必要としない。
「そしてノックス・フォリーからは、どのような作戦内容が届いたのでしょうか、大佐殿?」
エスタロッサ中尉が興味深そうに問うと、
「ああ、これは個人的な見解だが、どうやら何の変哲もない作戦だな……。今回の作戦コンペティションには、〝ノックス・フォリーのアマゾネス〟は参加しなかったらしい」
「ええ、どうやら、ノックス・フォリーのアマゾネスは、先のゲッスンの谷の攻防戦の敗戦以来、不調を訴えてしばらく顔を見せていないのだとか伺っております」
「ほう、だからなのか……。通りで作戦自体が無味無臭なわけだ」
「無味無臭ですか?」
「うん、まあそれは良しとして……。今回提案された作戦だが……」
エリケンは、エスタロッサ中尉の補助脳に送られて来た作戦データを送り、それを踏まえて互いの感覚に共有させた。
「なるほど。これは確かに無味無臭と言えますね、大佐殿。しかし……」
「しかし、なんだ?」
「半分近くの身体を機械に換装してしまった私たちには、おあつらえ向きの作戦ではないかと」
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