偽りのシステム54
※※※
「失礼します、ダイゼン・ナルコザワ!!」
彼の執務室に、イバンゲル少尉が血相を変えて入って来た。
「何だね、いつも氷のように冷静な君らしくない……。今、ゲオルグ殿と打ち合わせ中だ。少しだけ待ってくれんか?」
大膳とゲオルグの両名は、執務室の中央に置かれた小ぶりのテーブルを挟んで、今後に必要な兵器の概要を検討中であった。
「いや、しかし! これは急を要するご報告です!! ゲオルグ中佐がいらっしゃるのであれば、なおのことです!!」
言われて大膳とゲオルグは顔を見合わせた。この男がここまでのことを言うには、きっとのっぴきならない事情があるのだろうとすぐに感づいた。
「言ってみたまえ、イバンゲル少尉。一体何があったのだ?」
「はい、それではご報告いたします。先ほど旧ペルゼデール・ネイションに潜ませておいた仲間からの情報によりますと、第十三寄留跡地に派遣された調査大隊はすぐさま進路を変え、第十五寄留跡地に向かったそうです」
「第十五寄留跡地に? あの暗殺組織に由縁の深いブラフマデージャ跡地にか? なるほど、シュンマッハめ。ムスペルヘイムを完全に焼け野原にしたのに飽き足らず、今度はブラフマデージャか」
大膳が眉間にしわを寄せて言葉を吐くと、
「ダイゼン殿。これは早々に追撃部隊の編成に取り掛かりませんと、手遅れになってしまうかも知れませんな」
リゲルデは、顎に蓄えた白髪交じりのひげを撫でながら答えた。すると、
「お二方とも、そんな悠長なことを言っていられません! ことは急を要します!!」
イバンゲルはまたもや声を荒らげた。
そんな似つかわしくない彼の態度に、二人は間をぱちくりしながら、
「どうしたと言うのだ、少尉? 奴がその程度のことをするのは、こちらとしては予測の範疇ではないか」
大膳がそう言った時、イバンゲルは苦虫を嚙み潰したような表情で強く首を振り、
「そ、それが、あの男は……シュンマッハというろくでもない男は、その我々の予測の範疇を遥かに超えようとしています。奴は、この世界で〝核〟を使おうとしているのです!!」
「な、なんだと!?」
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