偽りのシステム㊻


 ※※※


「ダイゼン・ナルコザワ。ご報告いたします。シュンマッハ率いる現ペルゼデール・ネイションに潜ませておいた仲間からの情報によりますと、シュンマッハは第十三寄留跡地に大規模な調査部隊を派遣したそうです」

 五次元人の彼らは、一人一人がそれぞれに違った人間の姿をして真ペルゼデール・ネイションに参加していた。彼らは、その自由に姿を変えられる特技を活かし、ひたすら諜報活動に成果を上げている。

「なに、第十三寄留跡地にだと? あのムスペルヘイムか!? 今さらムスペルヘイムに何の用があると言うのだ。むう……シュンマッハめ。ここに来てあのような場所に調査部隊を派遣するなどと、可笑しな真似を。あの場所に何があると言うのだ? イバンゲル情報少尉。それについては何か掴んでおらぬのかね?」

 イバンゲルと名を冠した五次元人は、少しも取り乱さぬ澄ました表情で、

「ええ、どうやらシュンマッハは、今現在かなりの情緒不安定な状態であると申し伝えられております」

「情緒不安定だと?」

「そうです。対象は、あの国家において数え切れぬほどの実力者や、罪も無き人々をその毒牙によって闇に葬っております。しかし、その手を留めることは未だまず、何を思ったのか今度は近々の側近であるヘーゲル・コルプスを……」

「な、何!? コルプス殿がどうかされたか!?」

「申し上げにくい事でありますが、一刀のもとにシュンマッハの手に落ちたと……」

 言われて大膳は言葉を失った。ヘーゲル・コルプスは、かつて大膳と共にペルゼデール・ネイションを立ち上げる際に尽力した同士だっだからである。

「あのコルプス殿が……。彼もただ一人の人間として戦えれば……」

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