偽りのシステム㊱


 実際のところ、自称〝五次元人〟たちも、自分たちが何なのか理解出来ていない。ただ、彼らは我々の存在する空間とは別の時の流れぬ空間に生き、そこで数ある宇宙の営みを観察して来たことだけが分かっている。

「互いに干渉し合っているということで宜しいのでしょうか、ダイゼン・ナルコザワ」

 ジェリー・アトキンスが問う。彼の言うことがもっともである。

「うむ、恐らくはその通りなのであろう、ジェリー・アトキンス殿。彼ら五次元人も、大きな意味では何らかの世界の一つの存在に過ぎないのかもしれん」

 言って大膳は円卓に手を突き、大きな体を揺らしてぬっと立ち上がり、

「全知全能、全てことわりを司る神のような顔をしている始祖ペルゼデールというシステムこそが怪しいと私は考えている! 一つの意思を集中させ、そして自らの考えにのっとるように仕向ける。それではとても自然な成り行きとは到底考え難い。それこそが、誰かにとって都合の良いシステムでしかない!!」

「ええ、だからシステムに徹底的に抗うのですね、ダイゼン・ナルコザワ?」

 シモーヌ博士が言葉をはさむ。

「その通り! 神と名の付くものは、そのほとんどが統治をするためのシステムだ。確かに我々人類は愚かだ。欠陥の多い生き物だ。だからかこそ、それを有意義に統治するための〝神〟ならば、その全てを悪とまでは言わぬ。だが、我々人類をもとより滅びの対象として扱うのであれば、どうあってもこれに抗うしかない。この考えは善悪で片づけられる話ではない! 我々が生き残るかどうかの意地の戦いなのだ!!」

 大膳は、この部屋から一望できる生命維持カプセルの山を見つめた。そこには、これまでに栄華を極めた他人種たちの数え切れぬほどの生命サンプルがある。

「彼らの仲間は、もうこの世には存在しない。無論、家族も仲間も、そして友人も……。それも、かのシステムによって容易に生み出され、そして滅ぼされて行ったのだ。私は、どうしてもそのような事態は避けたいのだ!!」


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