浮遊戦艦の中で361


 

「しかし、ダイゼン・ナルコザワ。聞かせてくれ。そのシステム……始祖ペルゼデールというシステムの目的とは何なのだ!?」

 リゲルデは核心に触れた。それこそが、人類が生き残る道しるべであるからだ。

 だが、大膳は首を振った。

「それが解からないのですよ、全く。大型人工知能にそれを問い掛けても、ここにおられる虹色の人類たちに問うても、その答えに辿り着かない。おそらく……と言えるような仮想の答えなら導けるのですが、なにせ先ほども申しました通り、x+y=zのxに入れる要素が少なすぎるのです」

「それはつまり、我々人類の見識が全く足りないということなのか?」

「ええ、その通りです。我々は、ようやくこのヴェルデムンドなる世界に移住することによって、地球環境以外の知識や経験を得ることが出来ました。ですが、それはまさしくそれだけのことです。宇宙開発計画による進展もままならない状況で、我々に他の星や、宇宙空間でのケーススタディはほぼ無いに等しい。そればかりか、他の星に居ると考えられる生命体との遭遇さえ経験がない。言うなれば、我々の知識は、この宇宙全体からすれば赤子以下の存在であると言っても過言ではない」

「赤子以下……か。それは的を射た発言だな。俺も戦略家の端くれだ。状況が理解できねば、どうあがいてもその先を勝ち抜くなど不可能。しかし、ダイゼン・ナルコザワ。それでは話が矛盾しているではないか。相手の目的も解からずに、どうやって戦略を立てると言うのだ? なにゆえにどう戦えばいいと言うのだ?」

 言われて、大膳は深くうなずいた。まるでその言葉を待っていたかのように。

「だからです。だからなのですよ、リゲルデ・ワイズマン殿。だからこそ、あなたたちにやってもらわねばならぬのです。人類に刺激を与える役目を」

「刺激……俺たちが?」


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