浮遊戦艦の中で362
「そう、こちらから刺激を与えるのです。なぜなら、今までその刺激は〝システム〟の過干渉によって施されて来ました。おそらく、あの浮遊戦艦なる物も、他次元世界の同一人物同士の戦い合いも、このヴェルデムンド世界移住技術の天与も。こんなものが、いきなりふっと湧いて出て来るのは異常事態であることは誰にも否めない事実だと思います。そして、それを手助けする人類に成りすました存在も紛れ込んでいることは明白の事実。なぜなら、ここにおられる虹色の人類の方たちも一筋縄ではない」
「つまりは、虹色の人類も過干渉に関与しているということか?」
「そうです。少なからず、私はその場面に遭遇してきました。過去に私の姿に化けた、ここに居る彼も、それらとは真逆の立場を取る一派というわけです。現実は、正と否、神と悪魔、正義と悪などという二元論などで出来ていない。我々人類や、虹色の人類とてそれは同じなはずです。だからこそ、先の戦乱は起きたのです。沢山の可能性を否定させないために」
「ああ、確かにそうだ。この俺は、自らのちっぽけな考えで戦乱という混沌の中に引き込まれたのだが、実際にはそういった大義名分があって起きた戦争だ。全てを画一化した考えにせぬために起きた戦争だ」
「ええ、そうです。私の知人である羽間正太郎という男。あれは、その考えを机上の空論とせずに、実存のものとして身体で表現した象徴的な人物。私はそれを見習い、自分の考えを現実で表現したいのです。我々人類が、真の人間として生き残るために」
「真人間……ということか」
「そう、我々、第六世代の人類とは、本当に中途半端で欠陥多い生き物です。獣としてかなり弱い。だからと言って、完璧な理性を持つわけではない。そればかりか、完璧な理性を保つことをすれば、子は絶え、後世に遺伝子を引き継ぐことすら困難です。もはや、それは人類の滅亡を意味するでしょう」
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