浮遊戦艦の中で356


「そうだ。支配をしない支配。それこそが、我ら真・ペルゼデールネイションの考えだ」

 大膳は言い切った。

 ジェリー・アトキンスには、その深い意味が理解できなかった。

 人は集団で成り立つ生き物である。集団という社会性を伴うことで、人生という舞台にその役割を演じるのだ。

 だが、そこには何らかの影響が要る。考えが要る。それが自然的状況、もしくは人的要因というものである。

 大膳は、そんな自然的状況に刺激的なエッセンスをたらし込むことにより、より故意的でより不自然でない支配を目論んでいるのだ。

「しかし、ダイゼン・ナルコザワ。なぜ、そのような回りくどい事をするのだ。民衆というものは、口では支配されることを否応なしに嫌悪したりするものだが、実際のところは自分の頭で考えることを望まない生き物だ。いや、望まないというよりも、大多数の人間は誰かの考えにのっとってことを運ぼうとする。そんな支配されたい連中に媚びを売ってまで回りくどいことをする必要があるのかね?」

 リゲルデは率直だった。リゲルデの言う内容は、あながち間違ってはいない。

「うむ、その辺りはあなたの仰ることにがある。だが、それでは意味が無いのだよ」

 大膳が言うと、

「意味がない? なぜ? いや、それはつまり、まさか……」

「そう、そのお考えの通りです、リゲルデ・ワイズマン殿。それでは、始祖ペルゼデールが許さないのです」

「始祖ペルゼデール……」

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