浮遊戦艦の中で225
「了解しました! 全ての部隊に先程の事象を共有させます!」
剣崎の命令により、一〇五部隊が目にしたことを全ての兵に情報としてもたらされた。
無論、兵たちは例外なく戸惑いを見せた。が、凶獣が擬態化しているとの情報が全ての兵に知らされたことにより、次第に見えていなかった兵たちにも擬態化した凶獣の姿が認識出来る様になって来たのだ。
「剣崎大佐。現在、各部隊からの報告によれば、擬態化した凶獣を認識出来ている兵の割合は約七割を超えています!」
ミコナス准尉は爛々と目を輝かせ剣崎の方を見やる。
「うむ、そうか。しかしまだまだだな。願わくばほぼ完璧に全兵の認識に高まらせたいところなのだが……」
「ですが、凶獣が動きを見せなくなってから三十分以上が経ちます。このまま相手が黙っているとは思えません……」
「ああ、それは分かっている。しかしだなミコナス准尉。まだ見えぬままの兵が攻撃を仕掛ければ、それはそれで返り討ちに遭う可能性が高い。我々の軍は極限られた人員で戦っているのだ。そう易々と犠牲を増やす訳にはいかんのだよ」
「人には個人差というものがありますからね……」
人々の間に能力の差が必ずあるのと同じように、同じ進化の過程を経ても進化の度合いに差が生じる。まして、ここまで急激な進化の過程を踏めばその差も急激なものとなり
「ミコナス准尉。人はその能力をイチかゼロかのあるなし議論で考えてしまいがちだが、本来は能力の度合いも千差万別なのだ。いくら今までに無い感覚が身に付いたとて、その認識力が低い者もいれば高い者もいる」
「なるほど。つまり、いきなり認識出来たからって人によって必ず差が出てくるから、それを使いこなすまでにも時間が掛かると?」
「その通りだ。それぞれの腕力が違うのと同じように、それぞれの感覚力も違う。そこで同じような大剣を振り回せば腕力の弱い者は力任せに戦闘を行うのは不利だ」
「なるほど。だから腕力が弱ければ、それなりに訓練をするか創意工夫をするかをしなければならない……」
「そうだ、その通りだ。ここは君が居た頃の地球ではない。少しの気の緩みや技量の無さで簡単に命を落とす弱肉強食の世界だ。だからこそ、極限まで万全を図りたいのだよ」
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