浮遊戦艦の中で216

 

 剣崎が、鼻息も荒く凶獣が蠢く闇の奥へと視線を向けた瞬間、

「剣崎大佐!! 凶獣たちの第一波が来ます!!」

 ミコナス准尉の悲鳴にも似た声が艦橋に響き渡る。

 そして誰もが息を飲んで身構えたと同時に、

「ぐおっ……!!」

 重爆撃弾を食らってもびくともしないウィク・ヴィクセンヌの艦橋が大地震のように大きく揺れた。

「第一、第二、第三の迎撃陣が突破されました! 敵は、上空の真上から仕掛けてきた模様です!!」

「何だと!? 真上からか!?」

 剣崎は、してやられた表情で苦悶の声を上げつつ、

ひるむな! 各陣には正面からの迎撃体制を怠るなと通告しろ!! 上空からの攻撃はブラフに過ぎん!! 敵の狙いは人工知能格納室だ。ハッタリに騙されるな!! フラッシラー中尉の迎撃三番隊にのみ遊撃を通達するのだ!!」  

「了解! フラッシラー中尉、聞こえましたか? これより三番隊の五機のみで上空から攻撃を仕掛けて来たヴェロンの掃討を図って下さい! その他の各陣はそのまま陣形を崩さず、ヴェロニアス密林正面より来る敵本隊の攻撃に備えて下さい!」

 剣崎の想定以上に、凶獣たちの進化は著しかった。これが剣崎のような百戦錬磨の指揮官でなければ、容易に上空からの攻撃に対して全てを迎え撃つところであった。

 だが、これが彼の経験則から来る勘というべきか、

(もし、俺が敵であったらこうするだろう……)

 と言った咄嗟の機転が脳裏をよぎり、こういった判断をさせたのだ。

「レーダーに敵影の反応!! 正面より、ヴェロンと思しき大群が迫って来ます!!」

「よし、本艦は直ちに砲門をヴェロにアス密林に向けて一斉射撃開始!! 迎撃各陣は、撃ち漏らした凶獣どもを掃討するのだ! 絶対に本艦に近づけさせるな!!」


 

 

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