浮遊戦艦の中で210
ケネリン准将の言う通り、課題は山積みである。
「しかし、今はこのヴェロ二アス密林を通らねば、目的の第十五寄留跡地に辿り着くことは出来ません。それには先ず、このウィク・ヴィクセンヌのメイン人工知能である〝火之神〟に不安要素プログラムを注入させ、高速度の思考を促さねばなりません」
一同は、剣崎の言葉に生唾をごくりと飲んだ。
ここまで説明されれば彼らも理解している。ここで〝火之神〟に不安プログラムを注入するということは、まだ誰も開けたことが無いハンドラの箱のふたを取り除くようなものである。
さすれば、どのような化学変化が見られるのか誰にも想像がつかないのだ。
「そういう魂胆かね、剣崎君。我々をここに集めた理由は……」
ケネリン准将が地鳴りのようなトーンの声で問うと、
「ようやくお分かりになられましたか、准将。いや、ここに集まってくださった皆さん。皆さんには覚悟を決めてもらう他ありませんな。お分かりの通り、事態は逼迫しているのです。この世界の肉食植物の進化は、今や目覚ましいものとなっています。ゆえに、もう悠長なことを言っていられぬ状態なのです。それだけはご理解いただきたい」
剣崎は言って再び軍服を羽織ると、静粛な態度で背筋を伸ばし一同にこう言った。
「たとえ道を示すのが人工知能であっても、道を切り開くのはあくまで我々人間の役目です。我々の道は、我々で決めるしかないのです。それが我々人間に残された道なのです」
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