浮遊戦艦の中で196
その一方で、腹心である親衛隊長サガウルを失ったマリダは、残った親衛隊と傷ついた敵の将兵たちをひとところに寄せ集め、今後の作戦の練り直しを図っていた。
「セリーヌ中尉。これで負傷兵はすべてですか? 探し漏れなど御座いませんか?」
マリダは暗闇の中を、自らの熱感知センサーによって傷ついた人々の容体を把握する。
「ハッ、陛下のご命令通り、このセリーヌ・アルケウス中尉。部隊の一人一人に勅命であると指令を下し、任務遂行に全力を傾けました!」
セリーヌ中尉は、その端正な顔立ちを強張らせ、直立不動で敬礼をする。
「大変な任務、ご苦労様でした。敵将兵をもすべて救出せよとの任務。さぞ困難だったことでしょう」
「い、いえ、陛下……。敵の生存兵たちは、思ったよりも素直にこちら側の意図を組んでくれて、すんなりと投降してくれました。これも、以前からのマリダ陛下の人望の賜物と存じ上げます」
「そうですか……。そう仰って頂けるのでしたら、わたくしにも救いがあります」
言って、マリダは陰のある暗い顔をする。
「如何なされました、陛下? お加減でも……」
「い、いえ、大丈夫です。仮にもわたくしはアンドロイドです。あなた方のように疲れ知らずで、病気に罹るようなことは御座いませんから……」
「しかし陛下……」
「ご心配をおかけして申し訳ありません。言っておいて少し矛盾するかもしれませんが、どうやら少しだけ疲れてしまいました。不出来なアンドロイドだと笑ってやってください。疲れるはずの無いこのわたくしが、疲れてしまうなどと……」
「いえ、陛下。陛下はいかな通常のアンドロイドよりも崇高に出来ており、そして、いかな人間よりも繊細に事を見ておいでのことと存じ上げます。ですから、そのように御自らを卑下なさるようなことは決して……」
「そのお言葉、とても痛み入ります。わたくしたちのサガウル殿を失ったこと。そして、沢山の人々を戦禍に巻き込んでしまったこと。わたくしはどうしてもそのことが心の中から離れません……」
「陛下……」
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